このお話に登場するみょうがを調べていたらこんな面白い記事を見つけました。
http://www.h6.dion.ne.jp/~chusan55/kobore8/412myooganoyado.htm茗荷の宿
野菜昔ばなし第十四話の題名は「恋忘れ草」です。忘れ草とはヤブカンゾウという野菜の別名。大昔、これを身に着けたり食べたりすると、つらいことや悲しいことを忘れることができるという俗信がありました。いやなことは、早く決着をつけて忘れてしまうのが良いでしょう。でも大事なことは、忘れずにしっかりと覚えていなければなりません。ところが、野菜のミョウガを食べると、記憶力がうすれて、嬉しいことも、悲しいことも、大切なことも、みんな忘れてしまうという言い伝えがあります。これ、ほんとでしょうか?
ミョウガ(茗荷)はショウガ科の多年草。東アジアの原産で、日本では本州・四国・九州の山野に自生しています。
でも、人間が生活していたと考えられる場所のあたりだけに生えているので、初めからの野生種ではなく、はるか昔に大陸から持ち込まれたものとされています。
半日蔭の場所を好み、家庭菜園でも一度植えると地下茎が周辺に広がって困るほど強健です。
花は咲きますが、タネはまれにしかできないので、地下茎で繁殖します。地上茎の高さは40~100cmくらいです。
食べる部分は、俗にみょうがの子とか花みょうがと呼ばれる花穂(かすい)と、芽を伸ばしたばかりの若い茎です。7~9月ごろ、根茎から幼茎が伸びて、土の中で花穂をつけます。花穂の中にはつぼみが幾つも入っていて、収穫しないでおくと白い花を開きます。
花穂は細かく刻んで、そばやそうめん、豆腐などの薬味として食べます。若い茎は切り取って、そのまま料理に添えます。どちらにも独特の香りがあり、それが食欲をそそります。
若い茎は光を遮って軟白(なんぱく)すると薄紅色になって、この色が眼を楽しませてくれます。これをみょうが竹と呼んでいます。そのほか、花穂は、天ぷらや酢の物、味噌汁の具・漬物など、独立した食材としても用いられます。
東京都文京区に茗荷谷(みょうがだに)という地名があります。ここは江戸時代にミョウガの栽培が盛んに行われていた場所です。現在は群馬県や秋田県で栽培が多く、高知県では、農用ハウスで一年中栽培され、出荷されています。
平安時代前期の記録書・本草和名(ほんぞうわみょう・918年成立)には、女加(めか)として出ています。古代にはメカまたはメウガと呼んで、主に漬物にして食べたようです。ミョウガは中国にも野生していますが、栽培したり食べたりはしないとのことです。
ミョウガの香り成分はアルファーピネン類。アルファーピネンとは、香り成分の一つで、針葉樹のマツやヒノキの香り成分と同類です。野菜ではシュンギクの香りもアルファーピネン類です。
アルファーピネンにはリラックス効果があり、脳からのアルファ波の発生を増加するなどの効果があるといわれます。また、食欲を促進し消化を助けるなどの効用や、発汗を促して体温を下げる効果などがあるそうです。
ミョウガを食べると物忘れがひどくなるという俗信がありますが、栄養学的にそのような成分は含まれていないし、科学的な根拠は何もありません。逆に近年、香り成分・アルファーピネンに集中力を増す効果があることが明らかにされてきています。
<ことば豆辞典> その一
【花 穂】 穂のような形になった花序。花序とは花やつぼみの集まり。
【軟 白】 野菜の茎や葉に土を寄せたり、紙などで覆ったりして光線を遮り、白くやわらかくすること。