昔、尾張の愛知郡のある村に、乳が出なくて困っている「おさよ」とその夫がいた。
おさよの姉夫婦が病気で両方とも死んでしまい、残された赤ん坊をおさよ夫婦が引き取っていたのだが、子供を産んでいないおさよからは乳は出なかった。仕方なく赤ん坊にはおかゆなどを食べさせていたが、まだまだ乳が必要な小さな赤ん坊は日に日に痩せていった。
困り果てたおさよは、身体の願いなら何でも叶うという名古屋の東光寺の薬師様へお参りに行くことにした。東光寺までの道のりは遠く、いくつも峠を越えなければならなかったが、おさよは真夜中に毎日毎日通い続けた。
満願である二十一日目、おさよが薬師様に精根こめてお願いすると、自分の乳房がみるみる張ってくるのを感じた。大急ぎで家に帰ったおさよが、赤ん坊に自分の乳をしゃぶらせると沢山の乳が出て、赤ん坊は死を免れることができた。おさよ夫婦はお薬師様にいつまでも感謝した。
(紅子 2011-11-8 3:35)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 小島勝彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 尾張の民話(日本の民話66),小島勝彦,未来社,1978年05月10日,原題「乳花薬師」,採録地「名古屋市」,話者「近藤サミ」,採集「富田和子」 |
場所について | 名古屋の東光寺(海上寺、乳花薬師如来) |
このお話の評価 | 10.00 (投票数 6) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧