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No.0955
ふかんぼのすげがさ
深んぼのすげがさ
高ヒット
放送回:0601-B  放送日:1987年05月30日(昭和62年05月30日)
演出:こはなわためお  文芸:沖島勲  美術:青木稔  作画:柏木郷子
茨城県 ) 25758hit
あらすじ

ある村に、他所から若い嫁さんがやって来た。

若い嫁は、まだ野良仕事に不慣れなため、いつも姑に小言を言われていた。それでも嫁さんは一生懸命に働いた。

やがて田植えの季節となった。この時期は何時にも増して忙しく、嫁さんは皆が家に帰っても田んぼで田植えを続け、嫁さんが家に帰るのは日が暮れて空に月が上がってからだった。

田植えは辛かったが、嫁さんを待っていたのは優しい夫で、遅くに戻る嫁さんの為に、そっと風呂を沸かしてくれた。そんな小さな幸せを頼りに、嫁さんは毎日重労働に耐えていた。

さて、忙しい田植えもようやく最後の日となった。田んぼには全部苗が植わり、残すはそれまで苗を育てていた苗代田(なわしろだ)の深んぼだけとなった。

深んぼとは、もともと泥沼だった場所に丸太や竹を縦横に沈めて足場にした田んぼだ。無論、足場を踏み外せば、それっきり浮かび上がって来れない底なし沼だ。

これくらいの田んぼの田植えならすぐに終わるだろうと思い、夫思いの嫁さんは夫を家に帰らせ、一人で深んぼの田植えをしていた。しかし深んぼの足場は悪く、思うように仕事が進まない。田んぼを月が照らす頃になり、ようやく田植えが終わろうとしていた。

ところが、嫁さんが最後の苗に手を伸ばした時だった。嫁さんはよろけて足場を踏み外してしまったのだ。

夫は、嫁さんの帰りがあまりにも遅いので、家を抜け出して深んぼに迎えに行った。すると、煌々と月に照らされて、嫁さんがいつも被っていたまだ新しい菅笠だけが、ぽっかりと深んぼの真ん中に浮かんでいた。

(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)


ナレーション常田富士男
出典茨城のむかし話(日本標準刊)より
出典詳細茨城のむかし話(各県のむかし話),茨城民俗学会,日本標準,1975年10月13日,原題「深んぼのすげがさ」,文「中山和市」
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※掲載情報は 2011/2/11 22:30 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
9件表示 (全9件)
Perenna  投稿日時 2021/3/28 1:47
「湿田、深田」のキーワードで画像を探してみたら、新潟県白根郷や亀田郷の写真が見つかりました。
https://suido-ishizue.jp/kokuei/hokuriku/Prefectures/1513/1513.html

「田下駄」や「カンジキ」を履き、腰まで水につかる深田での田植えや、「田ソリ」や「田舟」を使っての稲刈りは、かなり過酷な農作業だったらしいです・・・
昭和20年代でも、このような深田で農作業をしていたのですから、江戸時代のころは、もっと悲惨で過酷な労働環境だったのでしょうね。
Perenna  投稿日時 2021/3/28 1:08
ゲストさま。

三土正則氏(農業技術研究所)がお書きになった「日本の土壌7・水田土壌」という論文に、この昔話のことが言及されています。
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8427585_po_13_2_7.pdf?contentNo=12&alternativeNo=

「茨城県下でかつて「笠田」という地名の由来を訊ねたとき「他村から来たばかりの嫁が、知らずに一人で出かけて田に埋もれ死に、田面に笠だけ浮いていた」という言い伝えを聞いたことがある。膝の上までつかったり、田下駄をはいた農作業は、今日ではほとんど見られないが、そうした強湿田は、かつて関東以北や日本海側の諸県には広かった。」

おそらく稲刈りの時には、足を滑らせないように田下駄をはいたり、やはり田植えの時と同じように、竹や松の丸太の上に載って、農作業をしていたのだろうと推察されます。
足場の悪い湿田の中で胸までつかって、危険な農作業に従事していた江戸時代の農家の人たちに対して、改めて敬意と憐憫の情を表したくなりますね。
ゲスト  投稿日時 2021/3/25 12:02
疑問なのですが、こうした田んぼは稲刈りの際はどういう状態になるのでしょうか。
Perenna  投稿日時 2020/10/4 2:33
ゲストさま。

「茨城の民話」には、次のように書かれています。
「その田んぼは底なしの深い田なので、丸太を入れてその上を足をそろーっと動かして、注意深く渡りながら苗を植えなければなりません。深田は、泥田の中へ入れた丸太ん棒の上に立って、やっと胸から上が出るほどなのです。」

このような写実的な文章を読んでみると、当時の危険な深田で働いていた農家の方たちのご苦労と大変さがしのばれて、涙してしまいますね・・・

さらに、お嫁さんが深田で命を落とすところは、次のように書かれています。
「夫が用事をおえて帰って来たとき、お嫁さんはまだ帰っていませんでした。夫はお嫁さんがよろこぶからと、またいつものようにせえ風呂を沸かして待っていました。
ところが、いつになってもお嫁さんは帰って来ません。心配になってみんなで行ってみると、田んぼはほとんど植えおわり、一か所だけ植え残っているだけでした。そしてそこには、お嫁さんがいつもかぶっていた菅笠がぽっかりと浮かんでいました。
お嫁さんは、泥田の中にある丸太ん棒を足場に胸までつかって植えているうちに、目まいがしてつるりと足をすべらして、この底なし田の中へ、吸いこまれるようにずぶずぶと沈んでしまったのでしょう。」

日本人の主食は、もちろんお米です。
その大切なお米を作るために、昔の農家の人たちは、現代人には考えられないような危険な目にあったり、他人にはうかがい知ることのできない苦労や心労があったのかと思うと、なんだか泣けてきます・・・
食べ物は粗末にできない、というお考えは、まったく同感ですね!
ゲスト  投稿日時 2020/10/4 0:23
地方には、下半身~腰までつかるような田んぼが多かったと言われています。
自分が子供時代に過ごした新潟でも、昔の写真で見た記憶があります。
今は機械もあるのでこんな危険な思いをする事は無いと思いますが・・・
(法律で禁止されているかも)

食べ物は粗末にできないなあと感じた次第です。
Perenna  投稿日時 2020/10/3 23:10
この昔話と似たような話は、未来社の「茨城の民話・第二集」にも収録されています。
「見えねえ田」(新治郡)という題名です。
「むかし、あるお百姓さんの家でお嫁さんをもらいました。ちょうどせわしい苗代かきのころだったものですから、嫁に来た翌日からお嫁さんは真新しい菅笠をかぶって、夫といっしょに田んぼへ出て働いていました。お嫁さんの生まれた家はお百姓でなかったものですから野良仕事は馴れていないので、仕事も下手ではかどりません。」という書き出しで始まっています。
お嫁さんが沈んでいった底なしの深田のことを、これからのち「見えねえ田」と呼ぶようになったそうです。
「このような哀話は、霞ケ浦のまわりの底なし田にはたくさん伝わっています。」とも書かれています。
新治郡のあたりは昔は沼や湿地帯が多く、江戸時代になってから埋め立てなどをして新田開発をしていった場所らしいです。
今ではこのような底なし沼や深田などは、戦後の再開発や宅地造成でなくなってしまったのではないかと思われます。
ゲスト  投稿日時 2018/10/2 14:01
竹村公太郎さんの日本史の謎は地形で解けるという本を読んでいて、胸まで泥に浸かって田植えをしている写真を見て、突如として幼少期にその映像をみた記憶が蘇りました。田植えをしていた若い女の人が足を踏み外して底なし沼に落ちていくシーンです。現代ではそのような稲作の方法なんてみたことないのに、鮮明に覚えていました。
まんが日本昔ばなしは日本の文化を伝えてますね。
あらすじ読んですっきりしました。
ゲスト  投稿日時 2015/10/18 18:13
私も若い女性が田んぼに沈んでしまうシーンだけが
記憶に残っていて、探していました。

あらすじを読んで思い出しましたが、
一生懸命に働いて、何もわるいことをしていないのに
死んで終わるというのが、子ども心になんとも
報われなくて、悲しくて、切なくて。

ようやく、見つけて、すっきりしました。
ありがとうございました。
ゲスト  投稿日時 2015/2/3 14:03
この話は子どものころテレビで見て
若い娘が田んぼに沈んでしまうシーンだけ異様に記憶に残り、探していました。田んぼが底なしのようになっていたことが不思議で、恐ろしく感じたものです。大人になってみると、娘の清廉で健気な姿に心をうたれます。
放送年は私は4歳です。私が見たのがそのときならば、何十年たっても記憶から消えない名作だと思います。
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