昔ある山寺に、たいへん蕎麦好きな和尚さんと三人の小僧さんがいました。
このお寺の小僧さんは、普段のおつとめ仕事の合間にソバ畑でも忙しく働いていました。ここの和尚さんはでとってもケチで、夜に小僧さんたちが寝静まると、自分一人でこっそりそばを食べていました。
そこで、小僧さんたちは相談して妙案を考えました。翌朝、小僧さん達は自分たちの名前を変えてもらうように和尚さんに申し出ました。それぞれの名前は、「ガスガス」「ガラガラ」「マイマイ」というちょっと妙なものでした。
その晩、いつものように和尚さんが一人でそばを打ち始めました。鰹節をガスガスと削る音を聞いた小僧さんは、大きな声で「呼びましたか?」と台所にかけこんでいきました。呼んでもない小僧さんがやって来た事に和尚さんは驚きましたが、「まあ仕方がない、一杯だけそばを食べなさい」と、ご馳走してあげる事にしました。
小僧さんは喜んで、お椀を取り出そうとガラガラまさぐっていると、もう一人の小僧さんが「呼びましたか?」と台所にかけこんでいきました。またまた起きてきた小僧さんに和尚さんは驚きつつも、「まあ、仕方がない」とそばをご馳走してあげる事にしました。
三人でそばを美味しそうに食べ始め、二人の小僧さんが嬉しそうに「あぁ、ぅマイぅマイ」と大きな声で言いました。すると、最後の小僧さんが「はーい!」と言いながら寝床から飛び出してきました。そして「私もそばを食べたいです」と囲炉裏の前に座りました。
和尚さんは「やられた」と思いながらも、三人の小僧さんに蕎麦をご馳走してあげました。
(紅子 2012-11-10 22:10)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 小汀松之進(未来社刊)より |
出典詳細 | 出雲の民話(日本の民話12),石塚尊俊、岡義重、小汀松之進,未来社,1958年09月15日,原題「三人小僧」,原話「仁多郡誌」 |
場所について | 島根県仁多郡奥出雲町(伝承地) |
このお話の評価 | 9.00 (投票数 3) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧