むかし、茨城県の八瓶山(やつがめやま)のふもとに小さな村があった。この村では地震が多く、村人たちは困っていた。
ところで、この村の村はずれにマンジロクという山のような大男がいた。マンジロクは仕事をするでもなく、毎日寝てばかりいた。マンジロクは腹が減ると起き上がり、縄をもって村の沼へ行き、そこで魚をとるのだった。そして、とった魚を石の上で焼いて食べ、腹がいっぱいになるとまた寝てしまうのだった。
ある日、マンジロクはいつものように沼に魚をとりに行くが、どうした訳か今日は一匹も魚がかからない。そうしているうちに、沼で大きな地震が起きた。マンジロクは沼の底で何が起きているのか不思議に思い、沼の中にもぐってみた。すると、そこには鯨の数倍もある大ナマズがいた。この大ナマズが沼の底で暴れていたため、地震が起こるのだった。さらに、大ナマズは大きな口を開けて沼の魚を食べていた。
沼の魚を大ナマズに横取りされて我慢が出来なくなったマンジロクは、大ナマズに向かっていった。しかし、いくら大男のマンジロクでも、鯨の何倍もある大ナマズには跳ね飛ばされてしまう。すると、マンジロクは沼から上がり、はじき飛ばされないように大岩を背負って、大ナマズを退治すべく再び沼にもぐった。
沼の底では大ナマズとマンジロクの激しい戦いが始まり、村には大きな地震が起きた。地震のせいで沼は土砂に埋もれてしまったが、マンジロクはお構いなしに大ナマズに挑む。マンジロクが大ナマズの頭に噛み付くと、大ナマズは頭が急所と見えて、急に死んだようにおとなしくなってしまった。安心したマンジロクは、いつもの癖でまた大ナマズの頭の上で居眠りを始めてしまう。
ところが、しばらくすると大ナマズが起きてまた暴れだしたので、村には大地震が起きた。困った村人は沼のふちまで行き、「マンジロク、マンジロク目を覚ませ。」と言った。村人の声が聞こえたのか、マンジロクは目を覚まし、大ナマズの頭に噛み付く。するとまた大ナマズはおとなしくなる。
それからというもの、地震がおきた時に「マンジロク、マンジロク目を覚ませ。」と村人が言うと、不思議と地震がおさまるのだと言う。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-7-23 11:13)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 日向野徳久(未来社刊)より |
出典詳細 | 茨城の民話 第二集(日本の民話72),日向野徳久,未来社,1978年12月05日,原題「マンジロク、マンジロク、目をさませ」,採録地「西茨城郡」,原話「飯村光子」 |
場所について | 八瓶山(茨城県西茨城郡七会村) |
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