『江曽の嫁殺し田』
昔、江曽にたいへんひどい姑(しゅうとめ)がいた。毎日、嫁をいびり通していた。嫁には、いつも、とてもできないほど、たくさんの仕事をさせながら、食べものも十分に食べさせなかった。また、嫁の里帰りを、一日も許さなかった。嫁は、泣きながらそれに耐え、「いつか、姑が心を入れ替えてく
れる。」と思い、神さまや仏さまを信じて生きていた。
ある日のこと、嫁は、いつものように姑のひどい仕打ちにより、夜明け前から、田植えに追いまわされていた。嫁は、積もる疲れと苦しみに耐えかねて、家に着くと、死んだように倒れてしまった。
これを見た観音様は、嫁を哀れに思い、その夜、嫁を里に帰してやった。そして、観音様が、嫁になりすました。そうとも知らず、姑は、次の日も、嫁を田へ追いまくり、いっときも休んではならないと見張っていた。嫁になりすました観音様も、あまりのひどさに、ついひと休みされた。姑は、そうはさせまいと、一歩、二歩、田に足を踏み入れたとたん、ズブズブと身体が沈んで、とうとう身動きがとれなくなってしまった。
観音様は、これをみて、はじめて姿を現され、「これ、姑よ、お前の嫁は、このようなひどい田で、毎日働いているのだ。かわいそうに思わないのか。心を入れかえよ。」と申された。
姑は、はじめて、自分のしたことのひどさがわかり、観音様に許しをこい、嫁にわびた。
その後、姑は、里から帰ってきた嫁と、仲良く暮らすようになった。
これを見た村人たちも、みんな、仲良く暮らすようになった。そして、この話を、いつまでも忘れないように、いつしか、この田を「嫁殺し田」と呼ぶようになったという。
(この田に、嫁が死んでしまったので、「嫁殺し田」と呼ぶのだという話もある。)
(江曽町伝承)
www.city.nanao.ishikawa.jp/tokuda/hurusato/minwa/minwa_07.pdf