昔、天草の栖本(すもと)の白戸海岸に、きれいな若い娘の水死体があがりました。肌は白く透き通り、鼻筋もとおった美しい顔立ちをしておりました。
村人たちは、この見た事もない娘を可哀そうに思って、海が見渡せる丘の上に墓を作ってあげました。そして数年がたち、不思議な事に娘の墓から一本のツツジが芽を出しました。このツツジは、花の色が赤白黄色と三色に分かれていて、とても美しいツツジでした。
ある日、一人の村人がどうしてもツツジの花が欲しくなり、一枝だけ折って自宅へ持って帰りました。するとどうしたことか、村人の腹が痛みだし、ツツジの花はその日のうちにすっかり枯れてしまいました。このツツジは誰が折っても、同じように腹が痛みだすという事が続くようになりました。
何だか薄気味悪くなってきた村人たちは、お坊さんを呼んでツツジにお経をあげてもらいました。村人たちは、念のために和尚さんにツツジの枝を一枝折ってもらうと、まもなく和尚さんの腹が痛みだしました。
村人たちは「お経の功徳も効かないので、このツツジはあの死んだ娘の化身に違いない」と考えました。あの若さで死んでしまって、きっと心残りだったに違いないと、村人たちは娘の事を憐れみ、墓を大切にしました。
(紅子 2012-8-3 2:21)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 浜名志松(未来社刊)より |
出典詳細 | 天草の民話(日本の民話47),浜名志松,未来社,1970年03月20日,原題「三色ツツジ」,採録地「栖本町」,話者「小島きえ子」 |
場所について | 天草の栖本(地図は適当) |
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