昔、宮崎のある村に、いつも腹をすかせている大喰らいの男がいました。
この男は、いつも「ひだりぃのぉ」と言っていたので、村人たちは「ひだりぃどん」と呼んでいました。ひだりぃとはこの地方では「腹がひもじい」という意味です。この頃の百姓たちは作った米を全部お侍に取られてしまい、いつもひもじい思いをしていました。
ある時、ひだりぃどんが夜中にこっそりクワを持って出かけている事が、村中で噂になりました。実はひだりぃどんは、誰も来ない山の中に秘密の田んぼ「隠し田」を作っていたのでした。隠し田の事がお上(おかみ)にばれると、田は取られ打ち首になる程の重大な犯罪でした。
やがて秋になり、ひだりぃどんは隠し田から一升ほどの米を収穫しました。そして真夜中にこの米を炊いて、夢にまで見た米の飯を腹いっぱい食べました。ところがあくる日、隣の人がひだりぃどんの家の中を覗いてみると、ひだりぃどんはニカっと笑ったまま死んでいました。
村人たちは「急に腹いっぱい食べたから死んでしまったのだろう」と、可哀そうに思い、ひだりぃどんを隠し田のほとりに葬ってあげました。そして毎年、この隠し田で稲を作って米を炊き、お墓に供えてあげました。
人が一度に食べられる米の量は「一合雑炊、ニ合粥、三合飯、四合ダゴ」と言い、「雑炊なら一合、粥ならニ合、飯なら三合、団子なら四合」と、昔から言われています。
(紅子 2012-8-9 2:16)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 大津貞子「宮崎県の民話」(偕成社刊)より |
出典詳細 | 宮崎県の民話(ふるさとの民話23),日本児童文学者協会,偕成社,1981年3月,原題「三合めし四合だご」,採録地「宮崎市」,再話「大津貞子」 |
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