昔、越後に、源教(げんきょう)という坊様がいました。源教は、冬になると村中を念仏を唱えて歩き回る事を、毎年の修行にしていました。
ある夜の事、魚野川(うおのがわ)にかかる橋で一心に念仏を唱えていると、前に溺れ死んだというお菊という名の幽霊が出てきました。幽霊は「長い黒髪があると成仏できないので髪を剃って下さい」と源教に訴えました。
翌日の晩、準備をして待っていた源教の庵にお菊の幽霊が現れました。髪を一束ずつ剃るたびに、髪の毛はスルスルと源教の手から離れ、お菊の胸元へ滑り込んでいきました。「これが女心というものか」と源教は思いながら、お菊の髪を全て剃り終えると、お菊は静かに手を合わせ消えていきました。
お菊の幽霊が去った後、ゴザの上には一束だけ髪の毛が残されていました。源教は、その髪の束を魚野川のたもとに埋めて手厚く葬ってあげました。人々はこの小さな墓を、毛塚(けづか)と呼びました。
(紅子 2011-12-4 20:52)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 西山敏夫(偕成社刊)より |
出典詳細 | ゆうれいばなし(幼年版民話12),西山敏夫,偕成社,1973年8月,原題「雪のなかのゆうれい」 |
場所について | お菊が落ちたとされる五十嵐橋(南魚沼市石打)旧塩沢町 |
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