昔ある村に、平吉(へいきち)というバクチ好きな男がいました。
ある日、バクチですっからかんになってしまい、困った平吉は「もう二度と博打はしないから助けてください」と、お地蔵さんにお願いしました。するとお地蔵さんが「ならば今夜、しょたんという商家の墓を掘ってみろ。金でも衣装でも何でも手に入る」とお告げになりました。
それを聞いた平吉は、墓をあばいて棺桶を開けてみると、中には娘の死体が入っていただけで他には何にも入っていませんでした。怒った平吉が棺桶をひっくり返すと、娘の死体が転がり出て、その勢いでのどに詰まっていた餅がコロリと取れました。
息を吹き返した娘は、命の恩人である平吉のことが好きになり、両親に平吉との結婚を許してもらうようにお願いしました。もともと娘にはいいなずけがいたので、父親は「平吉が大阪へ出て、商売で一旗あげたら結婚を許す」と条件を出しました。
さっそく大阪に出向いた平吉は、無事に商売を大成功させましたが、大好きなバクチに手を出してしまいました。全財産をすっかりなくしてしまった平吉は大阪から帰って来ず、両親も平吉の事はあきらめるようにと娘を促しました。
娘は仕方なくいいなずけと結婚する事になりました。嫁入り当日、娘がカゴに乗ってしょたんの家を出発すると、カゴを担いでいた一人が「バクチ打ちが~墓場の前から、地蔵が前さね~」と変な唄を歌い始めました。この唄を聞いた娘は、カゴ担ぎの男が平吉が変装しているのだと気が付きました。
そして急きょ婚礼を取りやめ、平吉にこっそりお金を渡し、もう一度大阪へ送り出しました。平吉もこんどこそバクチをせず、商売も無事に成功させて帰ってきました。平吉と娘はめでたく結婚をして、その後も末永く幸せに暮らしました。
(紅子 2012-10-24 21:07)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 下野敏見(未来社刊)より |
出典詳細 | 屋久島の民話 第一集(日本の民話37),下野敏見,未来社,1964年07月31日,原題「地蔵さんの言葉」,採録地「屋久町尾之間」,話者「岩川イワ」 |
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