昔、近江のある山寺に、密僧坊(みっそうぼう)という若いお坊さんが厳しい修行をしていた。この密僧坊は、どういうわけか味噌が大好きで、修行をこっそり抜け出しては村人から味噌をもらっていた。
力持ちの密僧坊は、味噌の代わりに村での力仕事を一手に引き受けていたが、ある時からお金も要求するようになった。村人たちが拒むと暴力を振るうようになり、村人たちは怖がって密僧坊を避けるようになった。ある時、密僧坊が水を飲もうと滝壺に行くと、足を滑らせそのまま溺れ死んでしまった。それを知った村人たちは、やっかい者がいなくなったと、喜んだ。
何日かすると、その滝壺に恐ろしい大蛇が出て、ある村人が食われてしまった。それを聞いた山寺の和尚さんは、「味噌をおとりに密僧坊を利用した村人たちも悪い」と諭した。村人たちは密僧坊にしてきたことを反省し、滝壺でお経をあげてもらい成仏するよう拝んだ。
そのうち滝壺からは大蛇も出なくなり、密僧坊の命日には味噌をお供えするようになった。そうして日照りが続いた時には、味噌を供えてお祈りすると雨が降るようになった。
(紅子 2011-11-20 0:12)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 近江の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 近江の伝説(日本の伝説19),中川正文,角川書店,1977年6年10日,原題「密僧坊」金剛輪寺ものがたり |
場所について | 大蛇の淵(金剛輪寺近く) |
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