トップページ >  お話データベース >  関東地方 >  栃木県 >  鬼怒沼の機織姫
No.1345
きぬぬまのはたおりひめ
鬼怒沼の機織姫
高ヒット
放送回:0853-A  放送日:1992年07月25日(平成04年07月25日)
演出:小林治  文芸:沖島勲  美術:千葉秀雄  作画:大森幸夫
栃木県 ) 61787hit
あらすじ

弥十(やじゅう)という若者が姉の家に届け物をした帰り、道に迷って鬼怒沼にたどり着いてしまう。鬼怒沼の素晴らしい景色に見とれているうちに弥十は疲れて眠ってしまった。

しばらくして弥十が目を覚ますと、近くで美しい娘が機を織っているのに気づいた。「鬼怒沼には機織姫がいて、機を織るのを邪魔すると恐ろしい祟(たたり)がある」という言い伝えを思い出した弥十は、一度は隠れるものの機織姫の美しさに見惚れて近づいて彼女に触れ、機織姫が機を織るのを邪魔してしまう。

機織姫は弥十を突き飛ばし怪我をさせる。怒り心頭の機織姫に我に返った弥十は、祟りのことを思い出し血相を変えて逃げ出した。しかし、機織姫は弥十を許さず、杼(ひ)をなげて村に逃げ帰った弥十を捕まえ、糸を手繰り寄せて引きずって鬼怒沼へ連れ戻す。

殺されると思った弥十は反撃に出て、機織姫を杼で突き刺した。弥十は顔面蒼白・血と泥で汚れたぼろぼろの姿ながら、素晴らしい細工の杼を持って村へ帰ってきた。鬼怒沼の美しい沼には機織姫が住んでいて、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟がある。

(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-6-14 23:58 )

※杼:機織り道具。糸が巻かれていて先端が尖っている。


参考URL(1)
http://home.f07.itscom.net/rainbow/kinutyujodensetu.html
ナレーション常田富士男
出典栃木の伝説(角川書店刊)より
出典詳細栃木の伝説(日本の伝説44),安西篤子,角川書店,1980年3年20日,原題「鬼怒沼の機織姫」
場所について鬼怒沼
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このページを印刷
地図:鬼怒沼
追加情報
このお話の評価7.5217 7.52 (投票数 23) ⇒投票する
※掲載情報は 2012/6/15 2:00 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話の移動 ( 39  件):   <前  1 ..  33  34  35  36  37  38  39  次>  
コメント一覧
10件表示 (全34件)
マルコ  投稿日時 2013/11/16 20:46
「鬼怒沼の機織姫」の奥鬼怒温泉に観光案内板 「健在」アピールという記事が下野新聞に載っていました。風評被害に女夫渕温泉ホテル廃業。奥鬼怒温泉もいろいろ大変そうです。温泉のお客さんがもっともっと来てくれるようにと思って書き込みします。栃木のまん日「鬼怒沼の機織姫」の舞台に行かれる方は、ぜひぜひ、立ち寄ってみてください。よろしくお願いします。

奥鬼怒温泉の宿

加仁湯 TEL:0288-96-0311当館では健康三浴(日光、森林、温泉)の旅館を推奨しており、その中でも温泉は肌がツルツルになる日本一の美人の湯です。春秋に収穫した美味しい山菜や茸料理もお見逃しなく。
※女夫淵温泉⇔加仁湯 送迎有(宿泊者のみ)●収容人数 270名様
●客室数 52室
●温泉 大浴場2(男女別)・露天風呂4(混浴3、女子1)・貸切露天風呂3・温水プール(夏秋)
●日帰り温泉(可9:00~15:00)、昼食(可12:00~13:00)
●宿泊料金 12,750円より
●ホームページ http://www.naf.co.jp/kaniyu/



手白沢温泉 TEL:0288-96-0156ブナの原生林を抜けると2,330mの高嶺”前根名草山”が山容を現す。残雪が美しい初夏、青々とそびえる盛夏、錦に染まる秋・・・何時来ても自然の美しさが温かく迎えてくれる一軒宿です。●収容人数 30名様
●客室数 6室
●温泉 大浴場2(男女別)・露天風呂2(男女別)
●日帰り温泉(不可)、昼食(不可)
●宿泊料金 13,500円より
●ホームページ http://www.teshirosawa.co.jp/



日光沢温泉 TEL:0288-96-0316主な宿泊客は登山客ですが、秘湯のお好きな方もお待ちしています。徒歩で約1時間30分、森林浴をしながらたっぷり汗をかいた後の入浴はまた、格別ではないでしょうか?源泉の違う、乳白色と透明の温泉が楽しめます。所々に昭和レトロが漂い、湯船につかっていると時間の経過を忘れてゆったりした気分になれると思います。●収容人数 70名様
●客室数 20室
●温泉 内湯2(男女別)・混浴露天風呂2(女性タイム有り)
●日帰り温泉(可9:00~15:00)、昼食(不可)
●宿泊料金 8,025円より




八丁の湯 TEL:0288-96-0306敷地内8カ所の源泉からたっぷりの湯が噴出しており雄大な自然を眺めながら山の秘湯の趣をご堪能ください。
※女夫淵温泉⇔八丁の湯 宿泊者送迎有(要予約)●収容人数 120名様
●客室数 35室
●温泉 内湯2(男女別)・露天風呂4(混浴3、女子1)
●日帰り温泉(可)、昼食(不可)
●宿泊料金
  本館 9,600円より
  ログハウス 11,700円より
●ホームページ http://www.8tyo-no-yu.co.jp/
マルコ  投稿日時 2013/11/16 20:38
鬼怒沼ハイキングへ行ってみませんか?ゆらり湯の旅より引用。

女夫渕温泉から日光沢温泉までは、「奥鬼怒四湯トレッキング」のガイドを参考に歩こう。日光沢温泉は最後の水場となるので必ず水筒いっぱいにつめておこう。道標に沿って山道に入ると、乙姫が絹布を織っていたという伝説にちなんだ。"おさ音橋"を渡ると15分位で、右→尾瀬沼・鬼怒沼。左→丸沼温泉という道標が出てくるので右の鬼怒沼方面に入ろう。囲りはニレ、ヤシヤブシ、カシワなどの広葉樹の葉が日陰を作ってくれるので、夏は涼しい山道となる。
 さて、登山道は大岩、木の根などが露出した急勾配となるので、ゆっくり歩かないと、すぐ「アゴ」を出すことになる。自然林の中、コマドリ、コサメビタキなどの野鳥のさえずりを聞きながら登って行くと、オロオソロシの滝展望台に着く。灰皿、木のテーブル、木のベンチと揃っているので、ゆっくり休んでいこう。遠く黒々とした原生林に真っ白な滝が一筋、とても印象的な滝だ。

 ここから先の登りは、やや穏やかになっていく。道沿いの木々には針葉樹が増え出す。森の花、ヒトリシズカ、タチフウロなどが時季には目を楽しませてくれる。やがて登山道は急に緩やかになってくると鬼怒沼はもう近い。周辺はシラビソの森となり、鬼怒沼湿原と合わせて国立公園特別保護地区に指定されている重要な森だ。青空が一段と広がってくると、突然、目の前がパッと明るくなる。そこには緑のジュータンを敷きつめたかのような鬼怒沼湿原が飛び出し、感動の一瞬だ。鬼怒沼には大小48の池塘が点在しており、鏡のごとく光り輝いている光景は、まるで天園にでも来たような雰囲気にしてくれる。木道を歩きながら花々を観賞したり、お弁当を食べたり、昼寝をしたり、ゆっくり鬼怒沼の自然を楽しもう。
 周辺の山々は、南東に日光白根山、北に尾瀬燧岳が真近に眺められる。標高(2039m)が高い鬼怒沼の花の開花は遅く、6月中旬ごろ沼の中央に水ばしょうが咲き出し、同時にショウジョウバカマの濃いピンク色の花が、カレ草の中から顔を出しはじめ、鬼怒沼に遅い春が訪れる。梅雨明けと同時に、イワカガミ、タテヤマリンドウ、ヒメシャクナゲなど、やさしい色の花々が美を競い合う。鬼怒沼の夏は短かく8月下旬には草紅葉がはじまり、9月中旬には湿原全体が真っ赤にもえるような色彩に移り変って行く。紅葉も終り、静まりかえった11月、晩秋の鬼怒沼を訪れてみよう。やわらかな初雪と薄氷のはった鬼怒沼には渡り鳥が遊んでいた。まもなく根雪となり、鬼怒沼は深い眠りに入って行く。
マルコ  投稿日時 2013/10/6 0:40
奥鬼怒温泉に観光案内板 「健在」アピールって記事より引用します!!

奥鬼怒温泉は鬼怒沼の機織姫の舞台になった鬼怒沼の入り口にあたるところにある温泉で、県内でも評判の高い温泉です!!マルコも一度行ってみたいです!!

【日光】湯元で2月25日に震度5強を観測した地震から半年が経過。風評に加え女夫渕温泉ホテル廃業の影響で奥鬼怒温泉郷への客足が回復しない中、温泉郷の旅館4軒が29日、同ホテル前の市営駐車場に各旅館の泉質や日帰り入浴の有無などを表示した観光案内板を設置した。観光客らに4軒の紹介や温泉郷の健在ぶりをアピールするのが狙い。市営駐車場での軽食提供なども検討しており、秋の行楽シーズンに向け誘客対策に努めていく方針だ。

 看板は縦横ともに約1・8メートルの大きさで、温泉郷への入り口となる市営駐車場内2カ所に設置。「八丁の湯」=鈴木光一社長(57)、「加仁湯」=小松輝久社長(48)、「日光澤温泉」=根本智規社長(43)、「手白澤温泉」=宮下千早社長(61)=のそれぞれの泉質や各旅館までの距離、ホームページアドレス、電話番号などが表示されている。
マルコ  投稿日時 2013/9/10 18:15
昔、日光の奥の川俣という所に「やじゅう」という十七になる若者が住んでいた。
ある日やじゅうは母親から、日光沢に嫁に行っている姉に子供が産まれたので祝いのもちを届けてくれと頼まれた。
昼頃姉の家に着くと姉は大変喜び、やじゅうは飯をすませ一休みしてから姉の家を出た。
今度は荷が無いので足は軽い。だが途中で足を止めた。もうとっくに下りにかかってよいはずなのに道はなお山を上っている。
やじゅうは不思議に思ったが「まあいいか、そのうち道が見つかるだろう」と思って歩いた。川俣で産まれ育ったやじゅうはこの辺りの地形を知り尽くしているので、別に不安もなかった。
そして上っていく内に次第に視界が開けた。そこは、やじゅうも初めて見る風景であった。
広々とした大地に幾十ともなく沼が点在し、しかも今夏の始めで可憐な花が咲き乱れている。
やじゅうは「何と美しい景色だ、この世の極楽とはこういう所を言うのか」と驚いた。
やじゅうは子供の頃から「鬼怒沼」の話を聞かされていた。
高くそびえる鬼沼山の上にはたくさんの沼があり、そこには春から夏にかけてきれいな花が咲いて、人を夢見心地に誘い込む。
その沼には「機織姫」が住んでいて、姫が機を織るのをうっかりのぞき見すると、恐ろしい祟りがある。
やじゅうはここはきっと鬼怒沼なのだと思った。花の香に酔い、それに歩き疲れていたやじゅうは岩の上にごろりと横になった。
岩は日に照らされて程よく温まっており、やじゅうはいつかうとうとと眠りこんでしまった。
そのうち日が陰って薄寒くなり、やじゅうはふと目を覚ました。するとどこからか誰かの歌声が聞こえてきた。
岩影から声のする方を見ると、やじゅうの目に機を織る娘の姿が映った。それは光り輝くような美しい娘であった。
やじゅうは機織姫だと思い、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟りがあると思い出し、思わず目をふせた。
だが何となく気になり、もう一度岩影からそっと娘を見てみた。娘の黒髪は肩を越えて背になびき、身には薄布をまとっている。
さらに遠目のよくきくやじゅうは、薄布の下の盛り上がった乳房や、丸みをおびた尻まで、すっかり見てとってしまった。
あまりに美しい娘の姿は天女様のように見え、やじゅうはもっと近くで見たいと、言い伝えも忘れてふらふらと娘に近付いていった。
やじゅうが娘の目の前に近付いても、娘はただ歌を歌いながら機を織り続けていた。
やじゅうは「天女様…」と言って娘の肩に手をかけた。
その時、娘は「手をどけてくださんか、機織りができませぬ」と言ってやじゅうの手を掴んだ。
その手はものすごい力でやじゅうの手をしめつけた。やじゅうは娘のあまりの力に思わず声をあげふりほどいた。
やじゅうが驚いて身上げると、娘は突然やじゅうの顔に爪を降り下ろした。
やじゅうが顔を触ってみると、その手には血がべっとりとついている。
娘は「この沼には近付いてはならぬと知っていて足を踏み入れたのか?」と言った。
やじゅうはたまらずその場から逃げ出した。
娘は逃げるやじゅうを見ながら「この沼に入った者は帰すわけにはいかぬ」と言って機織り機の杼(ひ)を投げ付けた。
やじゅうが必死になって走りに走りに、ようやく自分の家に辿り着いた。
だがその時、娘が投げた杼が戸板を突き破り、その糸がやじゅうの身体をぐるぐる巻きにした。
そしてやじゅうはものすごい力で引っ張られた。
やじゅうは必死で「助けてくれ!鬼怒沼にはもう二度と近付かねえ!」と許しをこいたが、娘はすごい力でやじゅうを引きずっていった。
やがてやじゅうは鬼怒沼まで引き戻されてしまった。やじゅうが必死で謝ったが、娘は許そうとしなかった。
思いあまったやじゅうは、娘に向かって殴りかかった。
だが娘はひょいとやじゅうをかわし、やじゅうは勢いあまって後ろの沼に飛び込んでしまった。
やじゅうは糸にからまれて身動きが取れず、とうとう沈んでしまった。
娘は沈んだやじゅうを見て、また機織りを始めた。それからしばらくして、沼に沈んだやじゅうがぷかりと顔を出した。
そしてゆらゆらと娘に近付くと、やじゅうは娘に杼を突き立てた。
娘は悲鳴を上げ、その場に倒れこんだ。横たわった娘は動かなくなった。
とその時突然、娘の身体が白く光り、やがて氷が砕けるように消えてしまった。
そしてやじゅうは、ようやく命からがらぼんやり村に戻ってきた。
やじゅうの着物はあちこち裂け、顔や手足は血と泥にまみれていた。
そしてそれでいながら、あめ色の見事な杼をひとつしっかりと握りしめていたそうだ。
それからも、鬼怒沼には春から夏にかけて見事な花が咲き乱れ、人を夢見心地に誘いこむ。
沼には機織り姫が住み、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟りがある、ということだそうだ
マルコ  投稿日時 2013/9/10 18:14
鬼怒沼の機織姫 日本の伝説44「栃木の伝説」より(安西篤子著)

 弥十は十七、川俣に住むいきのいい若ものである。
 よく晴れた初夏のある朝、弥十は母親から用事を頼まれた。日光沢へ嫁に行っている姉のところで、先日、赤ん坊が生まれた。祝いに餅をついたので、届けてやってくれというのである。 弥十はこころよく承知して、さっそく餅の包みを背負い、家を出た。
 山道をせっせと登ると、汗ばむほどである。ブナも白樺も楓も水楢も青々と繁って、その上をやわらかい風が渡る。駒鳥がしきりにさえずっている。草いきれでむせるようだ。鬼怒川の渓流が足もとを涼しげに流れて行く。
 昼ごろに姉の家に着くと、姉も姉婿もたいそう喜んで、昼飯を食わしてくれた。
 飯を済ませ、一休みして、弥十は姉の家を出た。
 こんどは荷がないので、足も軽い。弥十はとぶように道を急いだ。
 しかし、途中でふと立ち留った。もう、とっくに、下りにかかっていなければならないのに、道はなお山を登って行く。どうやら途中で、わきへ迷いこんでしまったらしい。
 「まあ、いいや、まだ日は高い。そのうちに道がみつかるだろう」
 川俣で生まれ育って、このあたりの地形を知り抜いている弥十は、べつに不安も感じなかった。
 登っていくうちに、しだいに視界が開けた。それは、弥十も初めてみる風景だった。
 ひろびろとした台地に、大きいの小さいの、幾十ともなく沼が点在する。しかも、いまは夏のはじめのことで、可憐な花が咲き乱れていた。
 岩の間に群れ咲く、玉子の黄味みたいな花は岩車、羞じらう乙女のようにうつむいて咲く淡紅花は姫石楠花、釣鐘の形の岩鏡、見渡す限り、咲き競い、甘い匂いはあたりに満ち満ちて、弥十は思わず五体が痺れた。
 「なんといい匂いだ。なんと美しい風景だ。この世の極楽とは、こういうところを言うのではあるまいか」
 子供の頃から弥十は、鬼怒沼の話を聞かされていた高くそびえる鬼怒沼山の上には、たくさんの沼がある。そこには春から夏にかけて、きれいな花が咲いて、人を夢見心地に誘いこむ。しかし、鬼怒沼には、妖しいことがいろいろある。
 むかし、沼に大蛇が住んでいた。あるとき、腕のいい猟師がこれを撃ち殺したために大洪水が起こり、麓の村々はたいそう迷惑を蒙った。
 それからまた、沼には機織姫が住んでいる。姫が機を織ろうとしているとき、うっかり覗き見すると、おそろしい祟りがある。
 弥十はこうした言い伝えをたくさん聞かされ、「だから、鬼怒沼へは、近寄ってはなんねえぞ」と、きつくいましめられていた。
 「ここは、きっと、鬼怒沼なのだ」
 心のうちで弥十は呟いた。が、少しもおそろしいとは思わなかった。花の甘い香に酔い、それに歩き疲れてもいたので、岩の上にごろりと横になった。岩は日に照らされて、ほどよくあたたまっている。弥十はいつか、うとうとと眠りこんでしまった。
 日が翳って、うそ寒くなったのか、弥十はふと眼をさました。びっくりしてあたりを見回した。
 「そうか、おらはここで眠ってしまったんだな」
 その弥十の眼が、沼の上にいるあるものを捉えた。光りかがやくような美しい女である。黒髪は肩を越えて背になびき、身には水色の羅(うすもの)をまとっている。遠目のよく利く弥十は、羅の下のもり上がった乳房や、まるみを帯びた白い尻まで、すっかりみてとってしまった。
 女はなにか歌を歌いながら、楽しげに機を織っていた。
 トン、カラリ、トントン、カラリ
 女の白い手が機の上をす早くかすめたと思うと、梭(ひ)が走り、筬(おさ)が動いた。
 弥十は呆然と見惚れていた。
 「天女さまだ、天女さまだ」
 乾いた唇をなめなめ、夢中で呟いた。
 ふっと、女の手がとまった。女は顔をあげて弥十を見た。たちまち女の顔に、怒りの色が走った。おそろしい眼をして弥十を睨んだかと思うと、さっと立ち上がった。
 女の手から、空を切って、梭がとんできた。狙いはあやまたず、弥十は額をわられた。どっと血が溢れた。気がついたときには、もう、女の姿はどこにも見えなかった。
 弥十がぼんやりと家へ戻ってきたのは、その日も暮れ切った時分だった。どこをどう歩いてきたのか、弥十の麻単衣はあちこち裂け、顔も手足も血と泥にまみれ、履物もなかった。それでいながら、どこで拾ったのか、飴色のみごとな梭を一つ、しっかりと握りしめていた。
 あれほどいきのいい若ものだった弥十が、その日を境に、すっかり腑抜けになってしまった。眼はうつろで、ものも言わず、時折、口の中でなにか呟くばかりである。
 ・・・あれは、鬼怒沼のほとりへ迷いこんで、機織姫を見たにちがいない。
 村人はおそろしそうに噂した。
 弥十はそれからまもなく、痩せ衰えて死んでしまった。
ゲスト  投稿日時 2013/5/11 19:36
鬼怒沼は、鬼怒沼山の山頂近くにある湿原で、その標高は2,000メートルに達し、高層湿原としては日本一の高所にあるといわれているそうです。

秘境らしい幽玄のたたずまいを見せる鬼怒沼には、ヒメシャクナゲ、チングルマなど100種類を越える高山植物や、ルリボシヤンマ、オゼイトトンボなどの貴重なトンボ類が生息している。


東武鉄道鬼怒川温泉駅→市営バス女夫渕温泉行き(1日4本)で1時間35分、バス停:女夫渕温泉下車、徒歩4時間
日光宇都宮道路今市ICから国道121号、県道23号経由1時間30分
もみじ  投稿日時 2012/6/16 23:45
マルコさん
地元の方にそう言っていただけると嬉しいです。

もみじは、滋賀県出身です。
日本昔話の滋賀県はやはり琵琶湖関連が多いです。(^^;)

マルコさんのお話のとおり、
やはり実際に鬼怒沼山へ登るのが困難ということは

機織りは、「景色がかくも素晴らしい」という比喩で
機織姫が恐ろしいのは、
その景色を見るために沼にたどり着くのが非常に困難で危険なため
気安く登ろうと考えないようにとの戒めなのだろうなと思います。

お話の「春から夏にかけて」とか季節が限定してある点も
夏だからと軽装で登山して遭難して凍死する事故が今現在も各地であることを考えると
それが「うっかり覗くと祟りがある=気楽に登ろうと考えると事故に遭う」ということなのかな、と(・ω・)

なので鬼怒沼山に行く時は、やはり機織姫(山の天気)に要注意ですね(^^)


マルコ  投稿日時 2012/6/16 20:15
もみじさんが「鬼怒沼の機織姫」のあらすじを書き込んでくれて嬉しいです。
「鬼怒沼の機織姫」のお話はマルコの住んでいる栃木県のお話なので 他の県の方が興味を持ってくれるのは嬉しいですね。マルコもいつか鬼怒沼に行ってみたいと思っているのですが なかなか良い機会に恵まれなくって・・・。
行くとしたら春から夏でしょうね・・・登山好きの父であるマルオの話だと真夏の間でないと雪に閉ざされて行けなかったり、栃木県から鬼怒沼まで行くのには川に沿って歩いて行かなければならないので川の水量が多くない時期でないと危険だそうです。
まぁ機織姫は出てこないとは思いますが・・・鬼怒沼行くとしたら十分気をつけたほうがいいでしょうね。
beniko  投稿日時 2012/6/16 2:51
もみじさん、返答ありがとうございました。あらすじ文章の最後を再編集しました、ご確認ください。
いつかこのお話の完全版(尻切れしてない状態)に巡り合えればいいですね。
もみじ  投稿日時 2012/6/16 1:44
すみません、「鬼怒沼の機織姫」のあらすじを書き込んだ者です。
名前を記入するのを忘れておりました。失礼しました。

http://home.f07.itscom.net/rainbow/kinutyujodensetu.html

というサイトにて話の詳細を知ることができます。
栃木の鬼怒沼の機織姫の同伝説の話も記載されております。

私も、動画サイトで見たのですが同じく最後は切れてました(;´Д`)
書き込んだ時は確か主人公はその後死んでしまったはずだと思っていたのですが
もう一度調べたところ、元ネタでは主人公は亡くなってましたが
アニメではなんとか生きて帰った。というところで終わっていたようです。

私が記憶していたのは元ネタだったようです。
記憶違いから、間違ったことを書いてしまって申し訳ありません。

アニメのラストは弥十がふらふらになって杼を握りしめて帰ってきたあとに「鬼怒沼の美しい沼には機織姫が住んでいて、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟がある。」というのを言うことで、主人公の男の「その後」にあえて触れずに終わっていました。

一応、子ども向けに機織姫を倒して命からがら生きて帰ったと終わらせたけれども、機織姫がまた機を織ってる姿を入れることで、ニュアンス的には元ネタのとおり、主人公の男は「正気を失って死んだ」「弥十がその後どうなったのかは誰も知らない」的な感じなのだろうとは思います。

長文失礼しましたm(..)m
投稿ツリー
10件表示 (全34件)
新しくコメントをつける

題名:
ユーザ名:
投稿本文

投稿に関してのお知らせ

基本的に、誰でもご自由に投稿できます。お話の感想やコメントなどお気軽に投稿ください。
あらすじ投稿の場合は800文字前後を目安とした文章でお願いします。
投稿に対して一部IP規制を行っております。現在規制されているIPリストはこちらです。
※初めての方は「このサイトについて」もご一読下さい。(別ウインドウで開く)
※社会的倫理に反する書き込み、出会い系、営業的書き込みは、わりとすぐ消します。
※動画提供の呼びかけや要求はご遠慮ください、当サイトは動画データの有無とは関係ございません。

現地関連情報
出典本調査 facebook
Twitter

オンライン状況

26 人のユーザが現在オンラインです。 (21 人のユーザが お話データベース を参照しています。)

新着コメント(コメント24件)