昔、子供たちが山で木に生えているキノコを採っていた。この地方ではキノコのことを、なばと言っていた。子供たちは、キノコが高い所にあって取れないので苦戦していた。するとそこに一人の大きな子供があらわれた。
子供たちが「お前あの木に生えている、なばさ採ってくれれば半分やるぞ」と言うと、その大きな子供はすぐさま木に登り、なばを取ろうとしたが途中で落ちてしまった。大きな子供は泣き叫び暴れ始め、周りには竜巻が巻いていた。
そしてその子供は、木を根元から引き抜いて村に持って行った。子供たちは怖くなり走って村へ帰った。その時からその大きな子供の事をなばと呼ぶようになった。
それから何年か経って、村の近くの川が大雨で溢れそうになった。村人たちは壊れそうな堰(せき)を直していたが、なばだけはいつも何もせず犬と戯れていた。そんな事だから、村人たちはなばのことを、木偶の坊や、役立たずなど悪口を言っていた。
さて、村人たちの努力で堰の修繕は終わろうとしていた。ところがその時、なんと堰を支える柱が傾いてきたのだ。その時、誰かがなばに石を当てた。すると、なばはあの時と同じように泣き叫び暴れ始め、川に飛び込んで傾いていた柱を直し始めた。なばのばあさんは「なば頑張れ、お前ならできる。村人たちにお前の力を見せてやれ」と言って励ました。
なばは何度も流されそうになった。しかし、なばは立派に堰を守り抜いたのだった。その堰は、なばが泣きながら作ったという事で、なばの泣きぜきと名付けられた。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-8 20:29 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 熊本の伝説(日本標準刊)より |
場所について | なばの泣き石(小嵐山) |
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