昔、愛知県の刈谷市恩田町は広い原野で、ところどころに小さな林がありました。
その中でも一番大きな竹林には、初連という立派な白狐が住んでいて、この辺りのリーダーでした。初連には大変な神通力(じんつうりき)があって、豊川稲荷の平八狐(へいはちぎつね)にも勝るとも劣らぬ強さでした。こんな初連でも、自分の子供の前では普通の優しい母親でした。
ある時、狩りに訪れた刈谷のお殿様一行が、竹林の中にある松雲院に立ち寄って休んでいました。お伴の家来たちも、竹林の中で自由な時間を楽しんでいましたが、家来の一人が初連の巣穴を見つけました。巣穴の中には、一人で留守番をしていた初連の子供がいました。
家来たちは、近々行われるお殿様と大名の姫君さまとの婚礼の時に、姫へプレゼントしようと考え、子狐を捕まえて城へ帰っていきました。巣穴に帰って来た初連は、我が子が城へ連れ去られた事を知り怒り狂いました。
初連は、仲間の狐たちを大勢集めて、城へやってくる花嫁行列に化け、殿様のいる城へ乗り込みました。まんまと殿様をあざむいた初連は、子狐を連れて恩田の森に帰っていきました。
これを知った殿様は、怒るどころか初連の子を思う親心に強く感心し、あれほど好きだった狩りもぷっつりと止めてしまいました。
(紅子 2012-7-30 3:49)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 愛知県 |
場所について | 松雲院(初蓮が住んでいた所) |
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