栃木の語り部 栃木語り部の会では・・・。

千駄塚 についてのコメント&レビュー投稿
昔、下野(しもつけ)に、牧の長者という骨董好きな大金持ちが住んでいました。その頃、陸奥の国にもたいそうなお金持ちの商人がいて、貴重な荷物を運ぶ途中、長者の屋敷に一晩泊め...…全文を見る

栃木の語り部 栃木語り部の会では・・・。

投稿者:マルコ 投稿日時 2014/2/22 20:12
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栃木の語り部 栃木語り部の会では栃木の民話を聞ける企画を多く行っています。栃木県立博物館では、ときどき、栃木のいろんな地域の語り部さんたちがいらしゃって話を聞かせてくれるようですよ。

もしも、本気で昔話について調べたいなら、こういう会に参加してお話を聞かせていただいたり、質問してみるのも良いと思います。

栃木の語り部  栃木語り部の会サイト

http://cc9.easymyweb.jp/member/mukasi-tochigi/default.asp

昔、むかしの話だ。
安房神社のそばに、牧の長者という大したお大尽様がいた。広い屋敷にはいくつもの蔵がずらりと立ち並んでおったと。
ある時、陸奥の国から来た商人(あきんど)がここを通りかかった。珍しい蜜蝋や漆の入った千駄の荷物を馬に積んで鎌倉に向かう途中だったが、日が暮れてしまったのでこの長者の屋敷に泊めてもらったと。
その夜、長者と商人は酒を酌み交わしながら話しに花が咲いた。はじめは商人の旅の話を聞いていたが、そのうちに長者が自慢話を始めたと。
「わしの家には、白い鶏の掛け軸があって、毎朝コケコッコーと、時を告げるんだ」
「嘘つくんじゃねえ。絵に描いた鶏が鳴くわけねえ」
「嘘じゃねえ、本当のこった」
「いや、嘘だ」
いい争っているうちにむきになった商人は、
「絵に描いた鶏が鳴くなんてことある訳ねえ。明日(あした)の朝、鶏が本当に鳴いたら、馬に積んできた千駄の荷物、全部くれてやる」
と、馬千頭に積んできた蜜蝋や漆を賭けてしまったと。
その夜、床の間には、宝物の絵が掛けられ、長者と商人は枕を並べて寝たと。
次の朝のことだ。
「コケコッコー」という鶏の鳴き声に、商人は、たまげて目えさました。
ねむい目こすりこすり床の間見ると、白い鶏が生きているみてえに、うすっくらい中に浮かび上がっていて、もう一声「コケコッコー」と鳴いたと。
 商人はすっかり恐れ入って、約束どおり、千駄の荷物を置いて、空馬引いてとぼとぼ帰って行ったと。

 さて、その次の年、商人がまた、馬に千駄の荷物を積んで長者の屋敷にやってきた。商人は長者に、
「昨年はいいものを見せてもらった。だけんど、里へ帰ってから誰に話しても相手にされねえ。夢でもみたんじゃねえかって思って・・・。すまねえが、もう一度見せてくれねえか。もし、掛け軸の絵の鶏がほんとうに鳴いたら、持ってきた千駄の荷物をまた置いていこう。でも、もし鳴かなかったら、去年の荷物の蜜蝋や漆を、全部返してくれろ」
と言ったと。
「ああ、分かった、分かった。何度でも見せてやろう」
長者は承知した。
 その夜、床の間には、宝物の掛け軸が掛けられ、長者と商人は枕を並べて寝たと。次の朝、遠くで、コケコッコーと他の家の鶏が鳴くのが聞こえたのに、どうしたことか、掛け軸の鶏は、明るくなっても鳴かなかった。
「やっぱり、鳴かなかったでねえか」と言うと、商人は約束どおり、昨年置いていった蜜蝋や漆の入った千駄の荷物を取り返して馬に積むと、
「今年持って来た荷物はしばらく預かってといとくれ」
と言って、馬引いて笑いながら帰っていったと。
 後で長者が宝物の絵をよく見てみると、鶏の首のところに針を刺した穴が開いていたんだと。してやられたと思ったがあとのまつり。商人はそれっきり、二度と長者の屋敷に来ることはなかったと。商人が残していった荷物を長者が開けてみると、中は籾殻や瓦っかけばっかりたんだと。
 長者はこの荷物を埋めて塚を築いた。これが今に伝わる千駄塚なんだとさ。         おしまい。
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