昔、越前のある村に源治(げんじ)という一人者の男が住んでいました。源治はろくに働きもしないで、何か楽に儲けられないかといつもいつも思っていました。
年の瀬を迎えた早朝、あたりには霜が降りてすっかり白くなっていました。そんな中、隣に住む働き者の爺さんが、霜の降りている庭に出て何かを探しているようでした。
隣の爺さんは「菅笠(すげがさ)程のサイズで丸く霜の降りてないところを掘ると、宝が出てくる」という夢のお告げを信じて、一生懸命探していたのです。
それを知った源治は、夜の間に爺さんの家の前に菅笠を置いて、丸く霜の降りていない場所を作りました。翌朝、そうとも知らない爺さんは、源治の作った丸い場所を見つけて、さっそく掘り始めました。
源治は「騙されているとも知らないで」と笑って見ていましたが、なんと驚いたことに本当に小判の詰まった壺がでてきました。これには源治も驚き、自分の家の庭でもやってみようと考えました。
その夜、源治は有り金全部をはたいて、沢山の菅笠を買って自分の庭に敷き詰めました。翌朝、霜の降りていない菅笠の下をあちこち掘ってみましたが、どこを掘っても宝など出てきませんでした。
(紅子 2013-10-14 15:05)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 杉原文夫(越前の民話)より |
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