昔々、磐梯山のふもとに倉吉(くらきち)という貧しい若者が住んでいた。倉吉は、近くの池へ行って魚を釣り、これを売って暮らしを立てていた。
ある日、倉吉はいつものように池に釣りに出かけたが、どうしたことかこの日は一匹も魚がかからない。そのうち空模様が怪しくなり、池には竜巻が起こり、倉吉の舟は大きく揺れた。すると池の中から1人の美しい娘が現れた。娘は鈴のような声で倉吉に話しかける。娘が言うには、備前の国に貝殻沼(かいがらぬま)という沼があり、そこに住んでいる“くろんど”と言う者に状箱を渡してほしいとのこと。
そこで倉吉は、状箱を持って遠い備前の国を目指して旅に出た。何日も歩き続け、ようやく備前の国の貝殻沼にたどり着いた倉吉は、沼の前で“くろんど”を呼んだ。すると沼の中から立派な若者が現れ、はるばる状箱を届けに来た倉吉の労をねぎらい、お礼に宝箱を渡してくれた。
倉吉は家に帰ると、早速渡された宝箱を開けてみた。すると中には手のひらに乗るほどの小さいな白馬が入っていた。箱の底にあった手紙を読めば、この馬に毎日米つぶ3粒を食べさせれば、あなたに幸せをもたらすと書いてある。倉吉は早速米粒を3粒白馬に与えた。するとなんと白馬は黄金を3粒産んだのだ。
それから白馬は毎日黄金3粒を産んだが、産み出す黄金は米粒のように小さいので、なかなかいっぱいにならない。そこで倉吉は欲をかき、いっぺんにたくさん米粒を食べさせれば、たくさん黄金を産むのではないかと考え、嫌がる白馬の口にたくさん米粒を押し込んだ。すると白馬はみるみる大きくなり、普通の馬の大きさになったかと思うと、倉吉を振り飛ばして、どこかへ走り去ってしまった。
そして、それまで白馬が産んだ黄金も、ただの貝殻に変わってしまった。倉吉が馬鹿なことをしたと後悔するも後の祭り。このことに気落ちした倉吉は、しばらくボンヤリしていたが、また元のように魚を取るようになったということだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-1-15 11:25)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | ふるさとの民話(偕成社刊)より |
出典詳細 | 福島県の民話(ふるさとの民話10),日本児童文学者協会,偕成社,1978年12月,原題「米つぶ三つぶ黄金三つぶ」,採録地「耶麻郡」,再話「一色悦子」 |
場所について | 北塩原村桧原雄子沢(地図は適当) |
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