とある里に年老いて働けなくなった馬がおりました。ある晩、家の主人が「働けなくなった馬を生かしておく理由も無いから、殺して皮でも剥ごう」と会話しているのを聞いた馬は、恐ろしさに駆られ馬屋を破って逃げ出しました。
逃げ出して命拾いしたのは良いものの何処にも行く当てが無く、仕方なしにとぼとぼ歩いていると、馬と同じように年老いて働けなくなり、殺されそうになって逃げ出した犬と、猫と、ニワトリに出会いました。3匹と1羽は連れだって旅をする事になりました。
その夜は小雪交じりの寒い夜でした。皆がひとつ処に固まって寒さをしのいでいると、何処からか人の話し声が聞こえました。3匹と1羽が様子を伺うと、二人の泥棒が盗んだ千両箱を前に酒盛りをしているところでした。
それを見ていた猫が皆に提案しました。「みんなであの泥棒を驚かして、あの千両箱を奪ってやろう」。
それで馬の上に犬が乗り、犬の上に猫が、猫の上にニワトリが乗り、皆で一斉に大声で「ヒヒーン!」「ワンワンワン!」「ニャーゴ!」「コケッコー!」と叫びましたら、泥棒はその大声にすっかり胆を潰し、お宝を放置して一目散に逃げてしまいました。
まんまとお宝をせしめた3匹と1羽は、それからもずっと一緒に旅を続けたと言う事です。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2012-9-6 4:56)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 瀬川拓男(角川書店刊)より |
出典詳細 | 動物の世界(日本の民話01),瀬川拓男,角川書店,1973年5年20日,原題「あてのない旅」,伝承地「中部地方」 |
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