昔、豊後国の小野瀬の河原に、おさんという古ぎつねが住んでいました。おさん狐は、それはそれは化け上手で特に若い娘に化けるのが上手でした。村の若者もキツネと分かっていながら、この娘に会いに夜な夜な河原に出かける程でした。
ある晩、この河原に行商の男が通りかかりました。さっそくおさん狐は若い娘に化け、行商の男に声をかけました。まぁ男も旅なれた剛の者で、すぐにキツネであることに気が付きましたが、男は騙されたふりをして誘われるがままおさんの家に上がり込みました。
行商の男は、出されたお酒も得体のしれない酒だとわかっていながら、くいっと飲み干しました。そして「なかなかの化けっぷりだが、ちと若すぎるんじゃないか?」と言いました。化けの皮がはがれたおさん狐も落ち着いたもので、それならと今度は色っぽい芸者に変身しました。その晩、男と芸者姿のおさん狐は、きつねと人間のへだてを忘れて一晩中酒を酌み交わし語り明かしました。
二人の夜が明けて秋風が吹きはじめた朝になると、男は再び旅立っていきました。それからもおさん狐は、河原に来る人を相手に人とキツネの垣根を越えて、打ち明け話を聞いたりしたりしたそうです。
(紅子 2012-2-17 0:55)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 大分県 |
DVD情報 | DVD-BOX第8集(DVD第39巻) |
講談社の300より | 書籍によると「大分県のお話」 |
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