奈良に近い小さな村に、政吉(まさきち)という男の子がおりました。政吉のお父さんが病気で働けなくなってから、たいそう貧しい暮らしをしておりました。
まだ遊びたい盛りの政吉でしたが、隣村の名主さんの家に六年の奉公に出ることになりました。名主さんの家に行く途中、「もう遊んでいる暇はないから」と、政吉の宝物だったおもちゃの黒牛を、丘の上の木の洞(木の穴)にそっと隠しました。政吉は朝から晩まで骨惜しみせず働くので、名主さんや奉公人にもかわいがられ、楽しく暮らしていました。
ところが、政吉が奉公に来て三年目に、裏山の柿の木から落ちて死んでしまいました。名主さんは残りの三年分の借金は帳消しにしてあげると、政吉の両親に告げたが、政吉の両親はそれでは気の毒だと思っていました。その夜、母の夢に政吉が出て「おらの代わりに黒牛が働くから」と言った。
次の日、名主さんの家に黒牛が現れ、木の洞に隠してあったおもちゃの黒牛はなくなっていました。黒牛は、他の牛の何倍も働く本当に良い牛で、名主さんからもかわいがられました。黒牛が来て三年の月日がたち、本来であれば政吉の年季明けの日となりました。その朝、働き者の黒牛は名主さんの家から姿を消し、木の洞からはおもちゃの黒牛が見つかりました。
名主さんは、その丘の上に小さな塚(つか)を建て、黒牛の霊を弔いました。その塚は「牛の宮」と呼ばれて、今も残されているという事です。
(紅子 2011-5-30 20:26)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 奈良県 |
DVD情報 | DVD-BOX第9集(DVD第43巻) |
場所について | 牛の宮 |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第043巻(発刊日:1981年3月) |
講談社の300より | 書籍によると「奈良県のお話」 |
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