ある村に、たいそう大金持ちでたいそう欲の深い金貸し業の喜伊(きい)という男がいた。
裕福そうな旅人が「水が欲しい」というので、喜伊はめずらしく文句も言わず水を与えた。おいしい水のお礼にと、旅人は大金を払った。旅人は「金は腐るほど持っている。なぜなら、金を増やす方法を知っているから」と言う。
それを聞いた喜伊は何とか頼みこんで、旅人から金が増える方法を教えてもらった。その方法とは、林の中にある祠(ほこら)にお金をお供えすると、翌日に倍になっている、との事だった。
疑心暗鬼だった喜伊は、ためしに少額のお金をその祠にお供えしてみた。翌日、祠の前にはちゃんと供えた金額の倍になっていた。欲を出した喜伊は、有り金を全部その祠にお供えした。翌日、ドキドキしながら確認しに行くと、お供えした全財産はきちんと倍に増えていた。
喜んだ喜伊は、夜中にこっそりと大金を自宅に持ち帰った。寝る前にもう一度お金を拝もうとして、金のはいった袋を開けてみると、なんと全て石に変わっていた。全財産が石コロになってしまった喜伊は、夜更けにいとわず旅人の豪邸に駆け付けたが、その豪邸は影も形もなくなっていた。
(紅子 2011-6-21 2:08)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 日向野徳久(未来社刊)より |
出典詳細 | 栃木の民話 第一集(日本の民話32),日向野徳久,未来社,1961年07月31日,原題「欲ばり喜伊」,採録地「下都賀郡」 |
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