昔、ある村に平助という働き者の百姓の男が住んでいた。
毎年、この村では、秋祭りの際に各家が持ち回りで宴会をする事になっていた。今年はこの男の番だったが、宴会用のお椀やお膳が無いので、悩んでいた。それを見かねて、滝つぼの底にある竜宮の姫が出てきて「お椀やお膳を必要な数だけ貸してあげましょう」と言ってくれた。
平助は借りたお椀やお膳のおかげで、宴会も無事に済ませることができた。いざ、お椀やお膳を返す時になって、平助は「一つだけなら良いだろう」という気になって、お椀を納戸に隠してしまった。
それを怒った竜宮の人たちが、平助の家を焼いた。納戸の中のお椀だけは傷一つなく焼けずに残り、その後は誰が何と言おうと竜宮の人たちは何も貸してくれなくなった。今でもこのお椀は、この村に残っているそうだ。
(紅子 2011-6-20 2:21)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | おのちゅうこう(未来社刊)より |
出典詳細 | 上州の民話 第一集(日本の民話20),小野忠孝,未来社,1959年06月30日,原題「龍宮の椀」,採録地「利根郡」,話者「星野吉朗」 |
場所について | 利根郡追貝村の吹割の滝 |
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