深い深い山との間に、小さな村があった。この村では三日月を見る事さえできないくらい、信州の山深いところにあった。
この村に、種作じいさんと息子夫婦が住んでいた。種作じいさんは、自分で切り開いた田んぼが100枚(100個)ある事が自慢だったが、この小さな村から出た事がないのが心残りだった。
月日がたち、歳をとった種作じいさんは、田んぼで働くこともできなくなった。死ぬ前に一度でいいから山の向こうが見てみたいと願っていた。
それを聞いた息子は、じいさんを背中に担いで山の頂上に登った。山の頂上から広い広い土地(田畑)を見たじいさんは「日本は広いなあ」と驚いた。
それを聞いた息子は「いやいや、日本はもっと広いよ。この3倍だよ」と答え、二人は嬉しそうに笑いました。
(紅子 2011-6-21 1:17)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松谷みよ子(未来社刊)より |
出典詳細 | 信濃の民話(日本の民話01),信濃の民話編集委員会,未来社,1957年06月30日,原題「百田ばなし」,採録地「下伊那郡」,採集「牧内武司」,再話「松谷みよ子」 |
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