昔々、鹿児島県の甑島の中津川の中ほどに大きな池があった。回りをくすの木が囲み、うっそうとして薄気味悪い池だった。
その池には何人もの人を飲み込んだ大ウナギが住んでいて、噂を聞いた腕に覚えのある強者がやってくるのだが皆飲まれてしまい一人として生きて帰ったものがなかった。
あるとき、日傘山という島の神社の神主さんが一計を案じて退治を決心した。見物人が見守る中、長いふんどしを着けた日傘山どんが池に入ったが、やがて見事に大ウナギを引き上げることに成功する。
この話は早速殿様の耳に届き、褒美をとらせたいが何がよいかと聞かれ、船を一艘もらった。日傘山どんは殿様からもらったお船を池の真ん中に繋いだが、ただそれを眺めるだけだった。たぶん、大ウナギを供養するためだったのかもしれない。
お船はいつしか朽ち果て、なくなってしまった。島の人はそのあたりの川をお船の川と呼んでいたが、そのうち御船川と呼ぶようになった。
(投稿者: みけねけ 投稿日時 2012-6-17 11:40 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 鹿児島のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 鹿児島のむかし話(各県のむかし話),鹿児島のむかし話研究会、鹿児島県小学校教育研究会国語部会,日本標準,1975年01月20日,原題「御船川」,文「松ヶ野盛文」 |
場所について | 甑島(こしきじま、地図は適当) |
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