昔、永明寺山のふもとに、ふんどし一丁の子供がいた。いつもいつも「あんころもちが食いてーなー」と言っては、おっかあに作ってもらっていた。
ところがある日の事、おっかあは年を取って死んでしまった。一人になってしまった子供は、しょんぼりと「あんころもちが食いてぇ」と泣いた。毎日毎日、「あんころもちがくいてーよー」と泣く子供のために、天国のおっかあが夢枕に立った。おっかあは「あと2回だけあんころ餅を食べさせてあげる」と約束してくれた。
朝になり目が覚めた子供は、さっそく空に向かってふんどしを投げつけた。しばらくして空からスルスルとふんどしが下りてきて、中には重箱に詰まったあんころもちが入っていた。夢中になって全部たいらげた子供は、天国のおっかあにお礼を言った。
ある日、村の見回りのために通りかかった殿様が、子供の「あんころもちが喰いてー」の声を聞いて自分も餡ころ餅が食べたくなった。子供は、お殿様のためにもう一度おっかあからあんころもちを貰おうとふんどしを投げた。「おっかあー、あんころもち、くりょー!」
随分時間がたって夕方になった頃、やっと空からあんころもちが降りてきた。そのあんころ餅があまりにもおいしすぎて、お殿様は一人で平らげてしまった。これに喜んだお殿様は、子供にたくさんの褒美を取らせた。そのおかげで、子供は一生不自由なくあんころもちを食べて暮らせたそうだ。
(紅子 2011-6-24 22:27)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 長野のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 長野のむかし話(各県のむかし話),長野県国語教育学会,日本標準,1976年10月01日,原題「あんころもちこぞう」 |
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場所について | 長野の永明寺山 |
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