No.0260
とうせんぶちのぬし
唐船淵の主

放送回:0162-B  放送日:1978年12月02日(昭和53年12月02日)
演出:大貫信夫  文芸:沖島勲  美術:くぼたかし  作画:大貫信夫
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あらすじ

屋久島の宮之浦にカラス撃ちを生業にする男が住んでいた。男の女房は臨月を迎えており、出産も間近だった。それで、男は狩に出る前に、無事に赤ん坊が産まれますようにと拍手(かしわで)を打って家を出てきた。

ところが、今日は山に獲物がなく、男は獲物を求めて山の奥へ奥へと歩いて行く。そうしている内に、日が暮れ、男は道に迷ってしまった。仕方がないので、男は大きな木の下で夜を明かすことにした。男がウツラウツラしていると、「おーい、おーい」と木の精がお互いに呼びかける声が聞こえる。木の精が言うには、今晩、宮之浦でお産があるので、その様子を見てくるというものだった。

しばらくすると、また「おーい、おーい」と木の精が呼びかう声がする。一方の木の精が、お産はどうだったかと尋ねると、もう一方の木の精は、立派な男の子だったが、残念なことに7歳の節句の日に川取り(かわどり)になってしまうと言うのだった。川取りとは、川の主に川の中に引き込まれてしまうことを言うのだ。

男は夜も明けぬうちに、大急ぎで家に帰った。すると、赤ん坊はもう産まれており、男が心配した通り男の子の赤ん坊であった。しかし、男は山での出来事を誰にも話さないでおいた。

男の子はすくすくと成長し、男も山での出来事を忘れかけていた頃。男の子が7歳になるある冬の日、男は家族に見送られ、この日も猟に出かけた。この日も獲物は少なく、男は山の中で道に迷ってしまう。男が一本の木の下で野宿を決めると、「おーい、おーい」とまた木の精の声が聞こえる。男はハッとして7年前の出来事を思い出した。木の精は言う、「いつかの子供も今年は7つになって川取りの年じゃ。かわいそうなことじゃのう。あの子の父親はカラスを取るでのう。カラスは、からす天狗と言うて、天狗の成れの果て。取って食う鳥でねえだ。」

そして、とうとう5月の節句がやって来た。この日、宮之浦では水神祭りがあり、近所の男の子たちは押し舟をすることが習わしになっいた。押し舟とは、唐船淵から河口までの舟こぎ競争を言うのであった。男は、水神祭りに行きたがる息子を家の中に閉じ込め、一歩も外に出ないように言った。そして自らは、鉄砲を持って家の戸口の前に立った。

すると、見知らぬ女が男の家にやってきて、ここの家の子を水神祭りに連れて行くというのだった。女の足元には水たまりが出来ており、男はこの女が川の者であることを知った。「オラの子供を川取りに来ただな!!」と言って、男は女に向かって鉄砲を放った。女は悲鳴を上げて逃げていく。女が逃げていく後には水たまりが出来ており、男が水の跡を追うと、それは唐船淵まで続いていた。女は唐船淵の主であったのだろうと男は思った。

その後、男の子に変わったことはなく、男の子はとうとう100歳まで生きたと言うことだ。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-8-6 11:46 )


ナレーション常田富士男
出典下野敏見(未来社刊)より
出典詳細屋久島の民話 第二集(日本の民話38),下野敏見,未来社,1965年02月25日,原題「唐船淵の主」,採録地「上屋久町宮之浦」,話者「中島菊助」
場所について鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦(地図は適当)
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地図:鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦(地図は適当)
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※掲載情報は 2011/8/7 2:24 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
3件表示 (全3件)
Perenna  投稿日時 2020/3/19 20:50
「屋久島の民話」の本文によると、「むかし、宮之浦に、カラスをとって食う狩人がおりました。ところが年中カラスばかりとるのでその数がめっきり少なくなってきました。」とあります。
木の精の言葉をよく読んでみると、父親がカラスばかりとっているので、カラス天狗の怒りにふれるのは自業自得だよ、とも解釈できそうです。
その後、狩人はカラスの猟はしなくなりましたが、それでも唐船淵の主(水の精?)に子供の命を狙われます。
なんとなく、話の辻褄が合わないような気がするのですが・・・?
カラス天狗が水の精に、狩人の子供の暗殺を依頼したと考えたほうがいいのでしょうか?
たーとも  投稿日時 2016/9/25 22:06
幸せな結末ではあるが、この家族はカラスを食ってたのか?
いやちがう、木の天敵であるカラスを駆除していただけのこと。
そのお礼として木の妖精が、この家族を助けてくれたのことか…
ゲスト  投稿日時 2016/2/25 22:40
力技で解決したな…
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