昔、阿蘇山のふもとのひのき村というところに、大吉という体は大きいがぼーっとしていて頭の足りない若者がおった。
ある日、大吉が山で仕事をしている男たちに弁当を届けようと、山道をあるいていた。ところが大吉は途中で腹が減ってしまい、途中で弁当を全部食べてしまった。
腹が減っていた男たちは大吉に腹を立てて、寄ってたかって大吉を殴った。すると大吉は「おらが悪いんじゃぁ」と大泣きながら、男たちが何十人掛かっても下ろせなかった大松を、一人で担いで村まで運んでしまった。
またある時も、大吉は父親に「なば(きのこ)を取ってこい」と言われた。大吉は、山できのこがたくさん生えている木を見つけたが、大男の大吉は木に登ることができなかった。
どうしようもなかった大吉はとうとう泣き出し、なばの生えている木ごと引き抜いて、村に持ち帰った。これ以降、村人たちは大吉のことを「なば」と呼ぶようになった。
ある年のこと、大雨が降り村人たちは大慌てで川に堰(せき)を作ることとした。なばの力も借りようとするが、泣かないなばに大力は出なかった。
村人たちから「肝心な時には役に立たん奴じゃ」と言われたなばは、「おら何にも役に立たんアホたい」と泣き出した。そして泣きながら、見事な堰を一人で作ってしまった。
そして今でも「なばの泣き堰」として、人々の生活に役立っているという。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-9-15 12:08 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 辺見じゅん(角川書店刊)より |
出典詳細 | 民衆の英雄(日本の民話04),辺見じゅん=清水真弓,角川書店,1973年3年20日,原題「泣けば百人力」,伝承地「熊本県」 |
場所について | 阿蘇山の麓にある檜の木村 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第26巻-第129話(発刊日:1978年11月24日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
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