No.1343
かがみそうどう
鏡騒動

放送回:0852-A  放送日:1992年07月18日(平成04年07月18日)
演出:高橋良輔  文芸:沖島勲  美術:西田稔  作画:秋穂範子
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鏡っていう物を知らない人々が起こした珍騒動

昔、ずっと山奥の村に男が住んでいた。

その男が一生に一度の念願叶って、城下町見物をすることになった。城下町は大変な賑わいで、見るもの聞くものすべてが初めてで驚くばかりだった。

男は村に残してきた女房のために、櫛(くし)と簪(かんざし)を買ったあと、道具屋に立ち寄った。店の中の沢山の品々の中に、鏡が置いてあった。男は鏡に映っているのが自分ではなく、他界した父親と勘違いした。

男は鏡という物を見るのが初めてで、自分の顔が父親に似ていることも知らなかった。男は鏡を買い、大満足で村へ帰って行った。

家に帰ると女房は留守だった。男は女房が帰ってくるのを待っている間、あることに思い当たった。父親は自分の父親であって、女房の父親ではない。自分の父親がいないとなると女房が寂しがるのではと思った。男は鏡を箪笥(たんす)の中にしまい、やがて帰って来た女房に櫛と簪を渡した。

何日かが経ち、男と女房が畑仕事をしていたが、男は仕事を抜け出し家に帰っていった。男は箪笥の中の『父親』に話しかけていたが、その様子を女房が覗いてしまい胸騒ぎを覚えた。女房は男がいない隙に箪笥の中を覗いた。

箪笥の中の鏡には、自分と同じ櫛と簪を挿している女が映っていた。鏡に映っているのが自分とはわからず、男の浮気相手と勘違いして怒りがこみあげてきた。

女房は「箪笥の中の浮気相手をとるなら家を出る」と言って騒動になった。男は誤解を解こうといろいろ説明するが、女房は聞く耳を持たず、今から比丘尼さま(びくに、尼さん)を呼んで確かめてもらうと言いだした。

夫婦に連れられて家にやってきた比丘尼さまは、箪笥の中をのぞき込んだ。すると鏡に映っているのが自分とはわからず「確かに中に女がいたが、反省して頭を丸めているので、もう男衆とは縁が無い」と言い、夫婦喧嘩をおさめた。

鏡が無い、鏡を知らない村で起きた騒動だった。

(投稿者: Kotono Rena 投稿日時 2013-8-21 21:36)


ナレーション市原悦子
出典荒木精之(未来社刊)より
出典詳細肥後の民話(日本の民話27),荒木精之,未来社,1960年06月30日,原題「鏡騒動」,採録地「八代郡」
場所について五家荘(地図は適当)
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地図:五家荘(地図は適当)
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※掲載情報は 2013/8/22 1:49 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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吉兵衛どん  投稿日時 2021/7/15 23:17
二人並んで鏡を覗けばあっという間に解決する話w
ゲスト  投稿日時 2019/4/13 19:27
鏡が無くて櫛やかんざしを付けた自分をみれないよ。
はるちゃん7  投稿日時 2013/6/14 9:49
なんとも滑稽なお話ですよね。
大きな目をパチクリさせて鏡を覗き込む様子がとても面白い。
昔は鏡がとても貴重なもので、見た事が無かった人も大勢いたんでしょうね。
araya  投稿日時 2011/12/7 0:20 | 最終変更
『肥後の民話』(荒木精之,未来社)によると、熊本市に伝わる話ですが、舞台は八代郡五家荘とのことで、五家荘は平家の落ち武者伝説のある里で、外部との交流を断ってたため、結構、トンチンカンなことが多かったらしいですわ。そのため、こうしたことも起こったという説明書きがありました。てことで、五家荘部落でポインティングしています。

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