むかしむかし、越中の小川寺村(おがわじむら)の近くに金持ちの長者がおった。この長者は村人達に五倍の利息で金を貸し、病人も子供からも容赦なく取り立てるという物凄い欲張りじゃった。
ある時、六兵衛という十人力の若者が長者の家にやって来た。長者は、給金は二人前で良いという六兵衛を喜んで雇ったそうじゃ。そうして、六兵衛は毎日休みなく働き、十五日目に給金を要求した。
ところが欲張りな長者は、村から五里離れた温泉まで長者を乗せた籠を一人で担いでいけたら賃金を払うという条件を出したそうじゃ。六兵衛はそれを承知して、一人で籠を担いで出かけた。
やがて、愛本(あいもと)橋という黒部川の断崖絶壁にかかっている橋まで来た時、六兵衛は橋の真ん中でピタリと立ち止まった。そうして、橋の上から長者の乗った籠を谷の方へ差し降ろした。このまま籠を落とされたら命がなくなること請け合いで、長者はぶるぶる震えるばかりじゃった。
六兵衛は「村人達を苦しめる欲張り長者め!このまま谷へ落としてやろうか!」と言いながら籠を揺すり続け、とうとう長者に「これからは二度と村人達を苦しめない。」という約束をさせたそうな。
それから心を入れ替えた長者は村人達に尽くしたので、村人達も大いに助かったということじゃ。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/10/29 14:26)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 石崎直義(未来社刊)より |
出典詳細 | 越中の民話 第二集(日本の民話55),石崎直義,未来社,1974年09月30日,原題「力持の六兵衛と欲張り金持」,採録地「魚津市本江」,話者「広田寿三郎」 |
場所について | 愛本橋(越中の小川寺村) |
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