昔々、あるところに太郎という男の子が病気の母親と二人で暮らしていた。
太郎は毎朝しじみを売って貧しい家計を助けていたが、二人の暮らしは大層貧しく、母の薬も満足に買うことができなかった。太郎は大金持ちの権造伯父に頼み込んで百文の金を借り、母に僅かばかりの薬を飲ませた。
それからせっせと働いて、ようやく百文こしらえた太郎が権造に返しに行くと、権雑は百文について五百文の利息を要求した。太郎は必死に働いたが、とても返せる金額ではなく、更に利息は増えて行くばかりだった。
薬も無くなって年の瀬が迫り、困った太郎が再び権造の家に金を借りに行くが、にべもなく断られてしまう。ガッカリして帰る途中の橋の上で、太郎は白髭の老人から一本足の下駄を手渡された。老人は、その下駄を履いて一転びすると小判が一枚出るが、あまり転ぶと体が小さくなるから気を付けろと言って消えてしまう。
早速、家に返った太郎が下駄を履いて転ぶと、老人が言ったとおりに小判が一枚飛び出した。太郎は三回転んで小判を三枚手にすると、下駄を神棚に祭った。
ところがたちまちこの噂を聞きつけた権造が、太郎のいない間にこの下駄を持っていってしまった。権造は庭一杯に風呂敷を敷き詰めると、無我夢中で転びまくった。慌てた太郎が権造の家に駆けつけると、庭一杯に光輝く小判の山があるだけで、権造の姿は何処にもなかった。やがて小判の山から下駄を見付けた太郎が、鼻緒に付いた小さな虫を指で弾き飛ばした。実はそれがすっかり小さくなってしまった権造だったのである。
(引用:狢工房サイト)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 稲田浩二(未来社刊)より |
出典詳細 | 岡山の民話(日本の民話36),稲田浩二,未来社,1964年03月15日,原題「ごんぞう虫」,採録地「岡山市」,再話「稲田浩二」,岡山文化資料より |
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