No.1076
やろかみず
やろか水
高ヒット
放送回:0679-B  放送日:1988年12月10日(昭和63年12月10日)
演出:小林治  文芸:沖島勲  美術:金箱良成  作画:児山昌弘
愛知県 ) 34511hit
あらすじ

昔、愛知県の木曽川沿いの古知野(こちの)という所に、低地の為しばしば洪水に見舞われる小さな村があり、雨季になると村人達は生きた心地もしなかった。

ある年も、何日も降り続く雨に木曽川の水嵩が増していき、村の男たちは女子供を避難させ、土砂降りの中懸命に堤防の補強をした。やっと雨が止み雲間に月も見えたため、男たちは束の間の休息をとりにそれぞれの家に戻ったが、十四郎(とうしろう)という男がひとり水門の守りに残っていた。

十四郎は川の近くで月見草の花びらを散らして戯れる若い娘を見つけ、危なっかしいので自分の家に連れ帰って事情を聞いた。すると娘は自分の夫が死んだ様子を語り出す。

娘の夫は三年前の大雨の年、十四郎と同じく水門の守りをしていた。その時「やろか、やろか」と川上から唸るような声が聞こえてきたので、気が強い夫は「よこさばよこせ」と応えてしまったのだ。すると突如、川から高波が押し寄せ、娘の夫は濁流に呑まれて帰らぬ人となってしまった。

娘がなげやりに、みんな流されて死ねば良い、月見草は死に逝く者の足元を照らす、などと嘆いて自殺をほのめかすので、十四郎は必死に止めた。すると今度は、娘は十四郎に女房など里へ返して自分と夫婦になれと迫ってくる。そして、もしそれが叶わぬならば自殺するというのだ。十四郎はとうとうこの娘の強引さに負け、女房を裏切って娘と一緒になることにした。

川の音が強く聞こえてきて、十四郎は娘が止めるのも聞かず水門の様子を見に飛び出した。水が引いたら娘と水の来ない高台へ逃げて、炭焼きでもして暮らそうなどと算段しながら水門に着くと、川からあの「やろか、やろか」という声が聞こえてきた。十四郎は娘の夫と同じように「よこさばよこせ」と答えてしまう。

そして村は濁流にのまれ、二人の行方も知れる事はなかった。

(投稿者: ひかる 投稿日時 2012-2-2 15:03 )


ナレーション市原悦子
出典瀬川拓男(角川書店刊)より
出典詳細自然の精霊(日本の民話02),瀬川拓男,角川書店,1973年8年23日,原題「やろか水」,伝承地「愛知県」
場所について愛知県江南市の古知野地区(地図は適当)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このページを印刷
地図:愛知県江南市の古知野地区(地図は適当)
追加情報
このお話の評価8.5714 8.57 (投票数 14) ⇒投票する
※掲載情報は 2012/2/2 20:45 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話の移動 ( 39  件):   <前  1 ..  24  25  26  27  28  29  30  .. 39  次>  
コメント一覧
5件表示 (全15件)
おばさん  投稿日時 2014/7/29 8:12
最後のナレーションの言葉、「木曽川のやろか水に飲まれた十四郎と女の姿はどこにも見えんかった」とありますが、実はこの二人はやろか水に飲まれてしまった、という事にして、二人は山の高い所へ逃げてひっそり暮らしたのではないかと思います。
駆け落ちです。
十四郎はやろか水が来る川を見に行く途中、あの女と逃げて、高台で炭焼きでもしようと言っていましたね。
あの女は十四郎に惚れて誘惑しましたが、彼も女に惚れてしまったのではないのでしょうか。
川の氾濫の後、村の人々や十四郎の妻も十四郎はやろか水に飲まれて死んだと思うはずです。
こう思うと、何だか、ロマンチックで哀しい大人の話に思えて来ます。
災害がもたらした、男と女の不思議な縁。
もみじ  投稿日時 2012/6/25 18:00
やろか水で検索したら、やろか水そのものが「妖怪」となってました。
Wikiで「やろか水」で載ってるあたりがすごいなと思いました(・ω・;)

やろか水、その正体は「鉄砲水」ではないかという説もあるということだそうです。

鉄砲水
土砂崩れなどで溜まった水が一気に流れること。
水位が短時間で急激に上昇するので避難するまでの時間が短くなってしまうのが特徴。
また、大きな石とともに激しい水流に乗って一緒に流れてくるので被害が大きくなることもある。


やろかやろか は、
大きな石が川底をごろごろと転がってくる様を表しているのでは?ということなので、
このお話のあらすじにそって考えてみても、あぁなるほどーと思います。


ひかる  投稿日時 2012/2/2 15:05 | 最終変更
あらすじでは、男の名前の「じゅうしろう」の文字がわからないので適当な漢字を充てました。

簡単な文章ではなかなか男女の情念みたいなアニメのニュアンスが伝わりませんが、昔ばなしのくせに大変色気のある話でございました。
mitsuzakura  投稿日時 2011/12/10 19:32
取り寄せていない(未読)のでアレですが、CiNiiで検索すると「やろか水」に関する論文がヒットしました。

「やろか水」伝説後日譚--「やろか雨」噂から「入鹿切」噂に至るまでの輻輳を記録した市橋鐸とその生徒たち ([口承文芸研究]第三十号記念特集 <声>の採集者列伝 聞き手たちの時代)
http://ci.nii.ac.jp/naid/40015539500
口承文藝研究
口承文藝研究 (30), 126-135, 2007
日本口承文藝學會


国立国会図書館では↓のページです。

「やろか水」伝説後日譚--「やろか雨」噂から「入鹿切」噂に至るまでの輻輳を記録した市橋鐸とその生徒たち
http://opac.ndl.go.jp/articleid/8859582/jpn

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

CiNii
http://ci.nii.ac.jp/
論文の検索、著者検索が可能です。ここで調べた情報から、上記国立国会図書館で論文検索、遠隔複写サービスの利用といったフローで資料を取り寄せることが可能です。

GeNii 学術コンテンツ・ポータル
http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp
マニアック  投稿日時 2011/10/19 20:06
ひねくれ役の多い、下唇おじさんが、この話では何だか、渋めのキャラに。
投稿ツリー
5件表示 (全15件)
現地関連情報
出典本調査 facebook
Twitter

オンライン状況

47 人のユーザが現在オンラインです。 (31 人のユーザが お話データベース を参照しています。)

新着コメント(コメント24件)