昔、熊本に何事にも縁起をかつぐ吉平さんという男がいました。
大根の種まきをする季節になり、朝から茶柱も立った事で「縁起の良いタイミングで種まきができる」と、喜んで畑に向かいました。
その途中、手拭いを拾ってあげた姉さんに「はばかりさん」とお礼を言われた吉平さんは、がっかりして「はばかりさんとは、縁起が悪い。大根が葉ばかりになる」と言って、その日は種まきをやめました。
翌日、またまた茶柱が立ったので意気揚々と畑に向かっていたところ、歯が痛くて苦しんでいる娘に出合いました。「虫歯が痛い」と言う娘の言葉を聞いた吉平さんは「大根の葉に虫がついてしまう、縁起が悪い」と、種まきをやめて家に帰りました。
ところが、翌日からは一向に茶柱が立ちませんでした。何日も何にも茶柱が立たず、大根の種まきは1か月も延期され続けました。ようやく茶柱が立ったある日、今日こそ種まきをしようと注意しながら畑に向かいました。
なるだけ人に会わないよう迂回して畑に行きましたが、庄屋さんと出会ってしまいました。吉平さんは目も合わさず「人と話すと縁起が悪いから」と会話を避けましたが、それを聞いた庄屋さんは怒って「根も葉もない事を言っている」と、言い捨てて去っていきました。
その年の吉平さんは、とうとう大根の種まきはしませんでした。その年の大根は高値で取引されたので、吉平さん以外の村人たちはたいへん儲けたそうです。
(紅子 2013-10-18 23:44)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 熊本県 |
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