Re: 大けやきの天狗

大けやきの天狗 についてのコメント&レビュー投稿
未見アニメの出典元調査を、araya氏が行いました。あくまで予測ですが調査した内容をこちらにも記載しておきます。 予測出典元: 『加賀・能登の民話』(清酒時男,未来社)「大欅の天...…全文を見る

Re: 大けやきの天狗

投稿者:ゲスト 投稿日時 2019/6/7 18:27
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むかし、飯川の大けやきの前に、
大きな造り酒屋があった。
ある時、その店へ、この辺りでは
あまり見かけない、白髪で白い長い
ひげをはやした老人が、酒を買いに
来た。
その老人が差し出した器は、一合か、せいぜい二合ぐらいしか入らないような小さな徳
利でした。その上、口は、針で突いたほどの穴しか開いていなかった。それなのに、老人
は、「この徳利に、酒を一升入れてくれ。」と言った。店の人は、あきれて「そんなちんこ
い徳利に、一升は入らないし、だいいち、こんなちょんこい穴に、酒も水も入らない。」と
言ったが、老人は、「入るか入らないか、とにかく入れてみてくれ。」の一点張りだった。
しばらく、押し問答をしていたが、店の人は、だんだん腹が立ってきた。しかし、老人
は、「もし、入らなくても、お金はちゃんと払う。」と言うので、店の人は、しぶしぶなが
ら、じょうごを適当にあてて、一升ますに、酒をなみなみとつぎ、静かに傾けた。すると、
不思議なことに、酒は、一滴も漏れずに、見事に針の穴ほどの徳利の口に吸い込まれてい
った。見ている一同は、ただ驚いているだけだった。
老人が出ていくと、一同は話し合って、あの老人は、いったいどこの誰かを調べてみよ
うということになった。店の使用人の一人が、老人の後をつけた。
老人は、知ってか知らずでか、急ぐでもなく、ゆっくりでもなく、不思議な足どりで歩
いていく。だいぶん歩いた頃、使用人が、ふと気づくと、なんと店の前に来ていた。おそ
らく、飯川の村を一周したのだろう。
やがて、老人は、うしろを振り向くと、にっこり笑って、大けやきの中へスーと消えて
いった。
これを見た使用人と店の人たちは、「これこそ、噂の大けやきの天狗さんにちがいない。」
ということになり、それから後は、村中の人たちが、大けやきも天狗さんも大事にするよ
うになったという。
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