狐のお産
むかしむかし、昔は今みたい病院さ行ってお産するなてなくて、ほとんどみな産婆さんに来てもらってお産ていうなしたもんだど。
ある時、すばらしい上手な産婆さんなもんだから、隣の村から迎えに来た。て、行って、ほして難産を何とかかんとか取り上げて呉た。ほうしたれば、何だか窮屈で、やっと入口入って行ったような気する。ほして銭いっぱいもらってきて、村はずれまで来たれば、
「おれ、こっから送らんねがら、こっから一人ばり行ってけらっしゃいはぁ」
「なして」て聞いだれば、
「犬恐かない」て言うたって。犬恐かないなて不思議なもんだ。村さ行ぐと犬いっからなれって、言うて、ほっから戻って行ってしまった。おかしいこともあるもんだと思って、家さ来て銭あけてみたれば、はいつぁ木の葉だったど。
「はぁ、ほんでは、おれ、狐にだまさっだんだ」
ほうしたれば、体中みな汚っでいだっけて。狐の穴の中さ入って行って、お産させてきた。んだげんど、その産婆さんが非常に喜んだって。人間ばり、おれば名人だ何だていうんでなくて、狐までおれば頼んで呉けっかていうわけで、大変気分ええぐしたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
東北文教大学短期大学部民話研究センター 民話アーカイブ
蛤姫(下)佐藤家の昔話(八) 79
案楽城郵便局長故佐藤陸三氏(山形県真室川町)
http://www.t-bunkyo.jp/library/minwa/archives/hamagurihime_ge/text/79.html