昔、河内の国に傘屋の政やん(せいやん)という若者がいた。両親も無ければ兄弟もない、一人ぽっちのセイやんは、朝から晩まで傘を張る仕事をしていた。
ある日、風に飛ばされた傘を捕まえた際、ふわりと体が浮くのを感じた。それにひらめいた政やんは、人間が空を飛べる傘を作る事に夢中になった。鳥のように空を飛ぶためなら、何度も失敗しようが、夜も昼も仕事はそっちのけで空飛ぶ傘作りに熱中した。
そうして、ついに政やんは空を飛ぶ事に成功した。村の中で一番高い木のてっぺんまで登り、傘で空を飛びながら、念願の鳥の気分を味わう事ができた。
空飛ぶ傘の噂は、大坂の殿様の耳にも入る事となった。どうやら殿様は、戦争のための道具として傘を買いつけたい、という話だった。それを聞いた政やんは、「人殺しのために傘を張ったんじゃない」と、夕方こっそりと傘を広げて飛び立った。大好きな鳥たちと一緒に、どこまでも飛んで行って消えてしまった。
紅子(2011-8-21 2:57)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 真咲美岐(大阪府) |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第02巻 が出典元ではないかと、個人的に予測しています |
DVD情報 | DVD-BOX第3集(DVD第13巻) |
場所について | 三河国 |
本の情報 | 講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第20巻(絵本発刊日:1984年10月15日)/講談社テレビ名作えほん第055巻(発刊日:1984年1月) |
絵本の解説 | 鳥の様に大空を飛べる羽が欲しい、というのは昔も今も変わらぬ人々の夢です。「鳥になった傘屋」の政やんも、かさを張る仕事をしつつ、心の中はいつも鳥のように飛んでみたいという思いでいっぱいでした。そのうち、飛べるような傘づくりに夢中になり、ついには本当に飛ぶことに成功するのです。大好きな鳥と一緒になって、どこまでもどこまでも…。この世の苦しみから抜け出して、鳥のように空高く、自由に羽ばたきたいという庶民の願いが感じられます。(河内地方のお話)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「大阪府のお話」 |
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