昔、佐名伝村にある小さな池は、奈良の興福寺の猿沢の池と地下でつながっている、という言い伝えがあった。この佐名伝(さなて)村には、心優しい「おいの」という娘がすんでいた。
ある日、お地蔵さんにお供え物をあげにいくと、気を失って倒れている旅のお坊さんを見つけた。おいのはお坊さんを背負い、看病するために自宅に連れて帰った。おいのは父親と二人で看病するうちに、その顔立ちが美しすぎるお坊さんに恋をしてしまった。
まもなく元気を取り戻したお坊さんは、奈良の興福寺(こうふくじ)に向けて旅立って行った。おいのはお坊さんの事を恋慕い、我慢できなくなり、お坊さんを追いかけて京都を訪れた。やっと再会できたお坊さんに告白したが、「修行中の身だから」と断られてしまった。落胆したおいのは村へ帰り、池に身を投げて死んでしまった。
それから数日後、興福寺の猿沢の池においのの笠(かさ)が浮かんできた。丁度そこへ、おいのの父親がお坊さんを訪ねてきて、おいのが遺書を残して死んだと告げた。
それからまもなく、お坊さんの姿も見えなくなった。実はお坊さんもおいのの事が好きだったので、きっと、おいのの後を追って身を投げたのだろうと噂された。
(紅子 2011-8-20 0:17)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 花岡大学(角川書店刊)より |
出典詳細 | 奈良の伝説(日本の伝説13),花岡大学,角川書店,1976年12年10日,原題「おいの池物語」 |
場所について | 佐名伝(さなて)村のおいの池 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第28巻-第136話(発刊日:1979年1月30日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
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