子どものない夫婦は、毎日水神さまに子どもを授かれるようにとお祈りしていた。するとある日、おかみさんが産気づいたが、産まれた子どもはなんとたにしだった。それでも夫婦は水神さまからの授かりものと思って大事に育てた。そして20年の歳月が流れ、二人はすっかり年をとってしまったが、たにしはたにしのままだった。
しかしある日突然、たにしが二人を楽にしてやると言うので、たにしに言われるままに、長者さまに納める年貢の米俵を馬にのせて、米俵の上にたにしをのせた。たにしは上手に馬を操り、長者もすっかり感心して、自分の娘の婿にならないかと言う。たにしは喜んで承知したが、長者の娘の内、姉のほうは、たにしの嫁になんかならねえと怒ってしまう。ところが妹のほうは、水神さまの申し子ならきっと良いことがあるでしょう、と言ってたにしの嫁になることを承知した。
こうして長者の妹娘は夫婦と一緒に暮らして良く働いたので、夫婦もだいぶ楽になった。こうして1年が過ぎ、たにしと嫁は薬師さまのお祭りを見物しに出かけた。嫁は願掛けをしたいからと言って、たにしを田んぼのふちに置いて姿を消した。それを見ていた長者の姉娘はたにしの好きな餌をまき、たくさんのたにしが田んぼからやって来た。姉娘は次に「カラスでてこい、たにしやるぞ」と言うとたくさんのカラスがやってきてたにしをつつきはじめた。
そこへ嫁が戻ってきて、慌ててたにしの上にはいつくばってかばった。すると帯の下のたにしが大きくなり、若者の姿になった。嫁の願いが通じてたにしは立派な若者になったのだった。その後二人は商売をはじめる。たにしの亭主の話が評判となったおかげで店は大繁盛し、たにし長者といわれるようになった。
(稿: 蔵人 本掲載日2012-8-14 5:58 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第1巻-第003話(発刊日:1976年4月30日)/童音社BOX絵本_第44巻(発刊日不明:1970~1980年頃)/国際情報社BOX絵本パート1-第010巻(発刊日:1980年かも)/二見書房まんが日本昔ばなし第5巻-第18話(発刊日:2005年12月19日)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第43巻(絵本発刊日:1985年12月15日)/講談社テレビ名作えほん第006巻(発刊日:1977年8月) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説によると「岩手県の昔ばなし」 |
童音社の絵本より | 絵本巻頭の解説(民話研究家 萩坂昇)によると「岩手県の昔ばなし」 |
国際情報社の絵本より | この話は、人と動物が結婚するという話が、重要な部分になっています。人間が、人間以外の動物と結ばれる話は意外に多く、相手は、この話の主人公のタニシの外に、ツル・ハマグリ・ウサギ・ヘビ・カエルなどがあり、いずれも、人間よりも優れた能力をもつものとして登場してきます。この話のタニシも、水神様のさずかりもので、タニシから若者への変身も、薬師如来のおかげということで、普通の人間よりも、優れたものとして登場してきます。この話は、古い日本の農耕生活と深いかかわりを感じさせますが、同じような話は、朝鮮・中国・インドなどでも知られています。(岩手地方の昔ばなし) |
講談社のデラックス版絵本より | 子供のいない夫婦が、水神様に願掛けて生まれたのが“たにし”。たにしは水神様の申し子なのです。たにしは長じて、珍しがり屋の長者に気に入られ、娘むことなりました。人間が動物と結ばれるという話はいろいろありますが、この話からは、われわれの生活がいかに深く農耕生活に根差していたかが、うかがわれます。相手がたにしと知って嫁入りする娘のやさしさには、おもわずほろっとさせられます。鎮守さまのお祭りの日に、たにしが若者のの姿になれたのも、嫁のやさしい心が鎮守さまに通じたからに違いありません。(岩手地方の昔ばなし) |
講談社の300より | 書籍には地名の明記はない |
レコードの解説より | LPレコードの解説によると「岩手地方の昔ばなし」 |
8.14 (投票数 14) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧