昔、村から村を旅歩く、目の見えない琵琶法師がいた。
ある夏の暑い日のこと、琵琶法師は大きな池のほとりに出た。琵琶法師が、池のほとりで琵琶を1曲弾き終えたところ、法師を呼び止める声がした。
声の主は池の主の竜神で、「自分は明日、下の村に大洪水を起こそうと思っていので、それまでに下の村から立ち去れ。このことは誰にも言ってはならぬ」と忠告した。法師はすっかり恐ろしくなり、走って池のそばを離れた。
朝になり、法師は下の村についた。やがて洪水が起こることを村人に知らせることができないことに、後ろめたさを感じつつも、急いで村を出ることにした。あせって村を出ようとしていた法師は、橋の上から川に落ちてしまった。
気が付くと、法師は村の百姓の家にいた。百姓の家族が、法師のことを気遣う様子に「このような人たちを見殺しにしようとするなどと、なんと卑怯なことか」と、自分のしたことを法師は恥じた。
法師は、池のほとりでの出来事を洗いざらい村人たちに話した。そして、池の主が言った通り、その夜にそれはそれは恐ろしい洪水が起こり、村中の家も畑もみんな流されてしまった。しかし、村人たちは高いところへ避難していたため全員助かった。
法師はその頃、少し離れた場所で琵琶を弾きながら竜神と対峙していた。そしてついに、法師は竜巻にまかれて姿を消してしまった。
その後、ある村人が池のほとりを通ったところ、池に一丁の琵琶が浮いていた。池の主の竜神は間違いなく、法師に復讐したのであった。そしてそれからこの池を、琵琶池と呼ぶようになった。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-9-14 12:20 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
場所について | 下高井郡山ノ内町志賀高原の琵琶池 |
このお話の評価 | 8.50 (投票数 4) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧