昔、近江に田の神様がいました。田の神様は田んぼのそばにいて、百姓が働く様子を見守り、田んぼの実りを守っていました。
ある年の秋、風の神が小さな娘っこを連れて里へやってきました。風の神の娘はとても可愛らしく、風の起こし方を教えてもらって大はしゃぎしていました。田の神様はこの娘に一目ぼれして、是が非でも嫁にもらおうとさっそく交渉に出向いて行きました。
風の神は、最初は「まだこの娘は幼いから」と断っていましたが、田の神様の熱心なお願いにとうとう娘を嫁に出すことにしました。結婚した二人は、なかなかの歳の差カップルでしたが、楽しい新婚生活をエンジョイしていました。
しかし、まだまだ娘は幼すぎました。やがて春になり田植えが終わった頃、娘はちょうちょを追いかけて田の上を飛び回っていました。すると、せっかく植えた苗は、全部めちゃめちゃになってしまいました。
これまでの度重なる娘のいたずらに、とうとう堪忍袋の緒が切れた田の神は、激しく怒って娘に離縁を言い渡し、実家に帰してしまいました。これを知った風の神は「娘を幸せにすると約束したくせに!」と激怒し、ものすごい風を起こしながら里の田んぼの上を飛び回りました。
それからというもの、近江のこの周辺では、田植えの時期になると決まってすごい風が吹くそうです。
(紅子 2013-8-7 0:59)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 笠井典子「浪速の昔話」より※ミス |
出典詳細 | 近江の昔話(日本の昔話 第06巻),笠井典子,日本放送出版協会,1973年11月05日,原題「たな神と風の神」 |
備考 | アニメでの出典は間違いで、本当は「笠井典子の近江の昔話」が出典元です。 |
このお話の評価 | 8.00 (投票数 2) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧