No.0952
でぐちがない
出口がない
高ヒット
放送回:0599-B  放送日:1987年05月16日(昭和62年05月16日)
演出:前田康成  文芸:沖島勲  美術:安藤ひろみ  作画:前田康成
岩手県 ) 25345hit
あらすじ

昔、あるところに吾作とお里という働き者の夫婦が暮らしていた。貧しい生活ながらも、吾作はお里と暮らしていければ幸せだった。

ある春の日のこと、旅芸人の一座が一夜の宿を求めてきた。夫婦が泊めてあげると、一座の女がお礼に踊りを見せてくれた。吾作は女の妖艶さに次第に魅入られていった。

この時をさかいに吾作は働かなくなり、お里のことは無関心になった。毎晩遅くなって、お酒と白粉の匂いをぷんぷんさせながら帰宅するようになった。

翌年の春。吾作は田植えの仕事をせず、家でぼんやりと過ごしていた。吾作の目の前に、あの美しい一座の女が姿を現したが、それは田植え仕事で汚れて泥まみれのお里だった。

吾作は、そんなお里に愛想が尽き「醜いお前と働きたくない。暇を出すから出ていけ」と、冷たい言葉を浴びせた。

お里は傷つき悲しみに暮れながらも、身体を清め化粧を施し、綺麗な着物に着替えた。やがて身支度を整えたお里を見た吾作は、お里の美しさに呆然となった。

お里が吾作にお別れの挨拶をし、家を出ようとした時「その戸口から出るな」と、吾作はぽつりと言った。お里は一旦、家の中に入り縁側から出ようとしたが「ここは、おらの縁側だから出るな」と、吾作はお里を引き留めた。

お里が「それでは出ていく戸口がないから、この家から出るなと言うことですか」と訊ねると、吾作は「そうだ」と答え、自分の愚かさを詫びた。

お里の美しさを感じた吾作は、また元の働き者となった。そのまた翌年にはお里は息子を産み、家族三人幸せに暮らした。

吾作は、息子に乳を与えるお里にこう言った。「おらは美しい花が好きだ。花は咲いた後に実をつけるから」と、てれくさそうに言いながら、吾作は仕事に励んだそうだ。

(投稿者: Kotono Rena 投稿日時 2013-9-5 20:50)


ナレーション市原悦子
出典中村政太郎「紫波町内の昔話民話百選」より
場所について岩手県の紫波町かも
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※掲載情報は 2013/9/5 21:58 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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もんた  投稿日時 2020/7/30 11:12
男のみがつてですね。
ゲスト  投稿日時 2020/2/14 17:10
2012/8/19 1:49パンチョさんのコメントに、大賛成です。( ´艸`)
でもそのあとの「花は咲いた後に実をつけるから」という言葉を聞いて、
旦那さんも真に戻ったのだと安心しました。
Perenna  投稿日時 2019/3/9 22:06
この昔話は、昭和17年に出版された「紫波郡昔話集」という本にも「女房を出す戸口」という題名で掲載されています。(コマ番号81/95)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1062604/81?tocOpened=1

「昔あつたぢもな。或男は隣の女房は常日頃化粧ばかりして居るので、ええ(良い)女ごに見へてるのに惚れて、家の女房は働くことばかりして、みだくなし(醜い)女ごに見えたから、お前はみだくなしだに依つてひま(暇)をけるはへと出で行けと言ふた。そこで家の女房は諦めて、出はつて行く気で湯(風呂)さ這入り、お歯黒をつけたり髪を結つたり化粧したらば、隣の女房よりも一段とよい女ごに見えたから、夫はひまをけでやるのは急にあたらもの(惜く)になつた。
すると其女房は夫の前さ手をつき、私も今日までお世話になりまして有りがとうございましたと礼を述べて、それではお前様も達者で居で下されとてひまを取り、台所からにわ(土間)の戸口さ行くと、夫は来て其出口さ立塞がつてれ、此所は俺の戸口だから此所から出るなと留めるので、常居の玄関さ行つてそこから出べとすれば夫はそこでも立塞がつて、此所も俺の玄関だからこゞからも出るなと言つた。そこで今度は座敷の縁側から出はべとすれば又そこさも塞がつて、此所も俺の縁側だから出るなと留めるから、女房もあきれてそれでは出て行く戸口は無いから私に出て行くなてしかと聞くと、夫はうん出で行くなと言ふので、女房はもえ(装)をほぐして元の通り家に居ることになつたら、男もそれから隣の女房さ通はなくなつたどさ。どつとはらい。」

このアニメはリアルタイムで見たことがあります。
お嫁さんがふくよかで肉感的な女性でしたので、入浴シーンや化粧をしているところがなんとも官能的で艶めかしかったことを、今でもよく覚えています。
一時の浮気心で、こんないい女房を追い出そうとしたなんて、この旦那もよっほど魔が差していたとしか言いようがないですね(笑)。
beniko  投稿日時 2013/4/1 0:38
そうなんですね、紫波町内の昔話民話百選という書籍で間違いないのですね。確定情報を教えてもらってありがとうございました。調査(確認作業)に目処が立つので大変助かります。

日本昔話通観は、こちらの図書館にも蔵書があるので、いつか行ったときには手にして確認してみます。
きたやん  投稿日時 2013/3/30 14:56
『日本昔話通観3 岩手』によると、どうやら出典元はタイトル表記の通り『紫波町内の昔話民話百選』のようです。1977年自刊とあるので、自費出版かガリ版などの自主製作?
『日本昔話通観』に掲載されているのが中村政太郎のもののようなので、読むだけならこちらで代用できそうです。
こういう郷土資料は地元に住んでいないと読むのも難しいですよね。
パンチョ  投稿日時 2012/8/19 1:49
嫁さんは、一生懸命農作業に励んだ結果、汚れた姿でいるんだ。
おしゃれをしないんではなくて、出来ないんだ。(旦那の稼ぎが悪いせいだろ!)
嫁さんは旦那の為に頑張ってるのに、当の旦那はよそから来た顔が美しいだけの女に夢中になって、かいがいしく尽くす女房に出て行けなどという。
そこまで言っておいて、嫁さんが里に帰るため、風呂に入り、化粧をしてみたら実は美人さんだったと気付いたとたん、今度は出て行くななどと言う・・・。

どんだけエゴイスティックな男なんじゃ!自分の都合だけでものをいうな!
嫁さん、こんな男とはさっさと別れてもっといい男を探すべきだよ。
・・・と、アニメ見ながら思った。やっぱり、夫婦は互いに支え合う関係でなくちゃね。
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