昔ある所に、それはそれは立派な和尚さんがいました。
ある夏の日、馬を小川に入れて洗ってあげる事にしました。すると和尚さんがいない間に、川に住む河童たちが馬を川に引きずり込もうとしました。馬は驚いて、大慌てで寺に逃げ帰っていきました。
和尚さんは、馬の背にしがみついていた一匹の河童を縛り上げ、炎天下の元に放置しました。すっかり干上がった河童は涙を流して命乞いをしたので、和尚さんは河童を許してやりました。頭の皿に水をもらって息を吹き返した河童は、謝るどころか和尚さんにザルを投げつけ、仕返しを誓って川へ帰って行きました。
その夜、河童一族が寺に押しかけ、和尚さんが寝ている間にお寺の中をめちゃめちゃに荒らしました。毎晩毎晩、河童の大群が寺を荒らし続け、ついにご本尊の首を折ってしまいました。
さすがの和尚さんも我慢がならず、千個の小石を村人に集めさせ、七日七晩かけて一つずつ小石に経文を書き続けました。そしてこの小石を河童の住む川へ投げ入れると、河童封じのまじないが効き、河童たちは体がこわばったように動かなくなりました。
河童たちは今度こそ心から詫びて、「炒った豆から芽が出て花が咲いても、決してイタズラはしない」と約束しました。和尚さんは、河童たちが約束を忘れないようにと、炒った豆を川へ撒きいれました。それ以来、河童たちのイタズラもなくなったそうです。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-9-30 16:47)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第二集(日本の民話46),松岡利夫,未来社,1969年10月20日,原題「えんこう経文」,採録地「大津郡」,話者「福永カネ」 |
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