昔々、ある所にお爺さんとお婆さんが住んでおった。2人は、山の上に畑を作って貧しいながらも幸せに暮らしていた。
今日は山の畑に植えた大根を収穫するので、お婆さんは特別に大きな握り飯をお爺さんのために作ってあげた。お爺さんは、朝からせっせと大根を引き抜いた。そして昼になり、ちょうど腹が減ったところで、お婆さんが作ってくれた握り飯を食べようとした。
すると、どこからともなく大男がお爺さんの前に現れ、お爺さんの握り飯を食べさせて欲しいと頼んだ。お爺さんは腹が減っていたので、最初は断ったものの、男が2、3日も食べていないと聞いて可哀想に思い、握り飯を半分に割って、男に分けてあげた。
善左衛門と名乗るこの男は、お爺さんに礼を述べ、この山を下った先に血泥が池があるので、そこに自分を訪ねて来てほしいと言って去っていった。
そこでお爺さんは、数日後に畑でとれた大根をおみやげに善左衛門を訪ねてみることにした。山の一本道を下って行くと、なるほど血のような赤い色をした池にたどり着いた。お爺さんは、善左衛門に言われたとおり、池の前でパンパンと手を叩いた。すると池の中から大きな白蛇が現れた。白蛇は善左衛門の使いだと言い、お爺さんを自分の背に乗せて池の奥のほら穴に向かって泳いで行く。
ほら穴の中をどんどん進んでいくと、ほら穴の中には滝があり、その滝を通り過ぎた先は、お爺さんが見たこともないようなキラキラと光る鍾乳洞になっていた。そして、そこには善左衛門がニコニコ笑ってお爺さんを待っていたのだ。
善左衛門は、握り飯を分けてもらったお礼に、今日はお爺さんに分けたいものがあると言う。善左衛門の傍らには、キラキラ光る小判をつけた小判の木があり、善左衛門はその木を手でドンと叩いた。すると木になっている小判が半分だけ落ち、善左衛門はこの小判をお爺さんにあげた。
こうして善左衛門からもらった小判のおかげで、お爺さんとお婆さんはその後何不自由することなく暮らせたということだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-9-24 15:27 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 比江島重孝(未来社刊)より |
出典詳細 | 日向の民話 第二集(日本の民話43),比江島重孝,未来社,1967年12月20日,原題「血泥が池の善左衛門」,話者「永野伊作」 |
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