昔あるところ(今の愛知県稲沢市)に一人暮らしのおじいさんが住んでいた。このおじいさんの楽しみは、近くに住む古だぬきとの毎晩の化かし合いであった。
しかしある日を境に、たぬきはじいさんのところへ現れなくなった。たぬきとの化かし合いを唯一の楽しみとしていたじいさんは、生きる張り合いをなくし、だんだん元気がなくなっていった。
時は過ぎて夏になり、じいさんの畑には見事な西瓜がたくさん実った。じいさんは、その西瓜を旅人達に1個二文で売ることにした。じいさんの西瓜は大変美味しく、飛ぶように売れた。そのうちじいさんはだんだんと西瓜の値段を、五文・十文と上げていった。
ある日一人の老人が通りかかり、自分は銭を持っていないので、西瓜を1個恵んでほしいと言ってきた。じいさんはこれは売り物だから、ただでやることはできない、と拒否した。すると老人は西瓜を食べていた旅人から、西瓜の種を少し貰い受けた。
老人はその種を地面に埋めると、種はすぐに芽をだし、あっという間に一面の西瓜畑となって沢山の実を付けた。老人は西瓜を食べ始め、「私一人では食べきれないから、皆さんもどうぞ」と呼びかけた。周りの人たちも一斉にその不思議な西瓜を食べた。
老人は、最後に残った西瓜1個を手に取りその場を立ち去った。すると老人の体からはしっぽが出てきて、あのたぬきになった。たぬきは「おれはこの1年、ずっと化ける稽古していたのさ」といって、山へ帰って行った。
気が付くと爺さんの売り物の西瓜は、全部なくなっていた。じいさんは悔しかったが、たぬきが元気でいたことがうれしく、思わず涙してしまった。
それから再び毎晩、たぬきはじいさんの畑に来るようになった。じいさんはたぬきを追っ払い、逃げるたぬきに向かって「たぬきめ、また明日来~い、明日来~い」というのであった。
(投稿者: カケス 投稿日時 2012-11-4 12:31 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 愛知県 |
場所について | 愛知県稲沢市(地図は適当) |
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