昔、滋賀の上砥山(かみとやま)に、寅吉という腕のいい若い大工がいました。
この寅吉は、お酒に酔うとどこにでも寝てしまう悪い癖があって、毎晩帰り道の途中で寝込んでしまうのでした。今宵も酔っ払って万年寺の峠道ですっかり寝込んでいた所を、親切な誰かが起こして家まで送り届けてくれました。
やがて厚い氷が張る寒い季節になりましたが、寅吉は今日もやっぱりお酒をたらふく飲んで、万年寺近くで寝込んでしまいました。真夜中の寒さで凍え死にそうな寅吉を、親切な一匹のタヌキが起こしてくれました。さらにタヌキは、夜道を明るく照らし、寅吉を背中におぶって、家まで送り届けてくれました。
毎晩、寅吉をおこしてくれていたのは、このタヌキでした。寅吉はこの日を境に、きっぱりを酒をやめました。寅吉はタヌキに感謝しながらも、どうして親切にしてくれるのか首をかしげましたが、万年寺の和尚さんは「困っている時はお互い様だよ」と諭されました。
それからもタヌキは、峠で眠りこんでいる人を起こしては家まで送ってくれたそうです。それで人々は、お人よしのタヌキという意味で「お好しダヌキ」と呼ぶようになりました。
(紅子 2012-4-11 2:06)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 滋賀県 |
場所について | 万年寺(滋賀県栗東市) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第095巻(発刊日:1988年2月) |
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