会津の天沼には多くのドジョウが住んでいた。しかし、人間によって毎日のように捕獲され、数が激減し、最後には5匹になってしまった。
このままでは全滅してしまう…。途方に暮れていたある日、沼のふもとにお坊さんがやってきて、おにぎりを食べ始めた。その時、お坊さんの鼻にアブが止まり、血を吸い出した。するとお坊さんは、「アブよ、お前も昼飯か」といって、追い払うこともなく食事を続けた。
それを見たドジョウたちは、「あの坊さんなら何とかしてくれる」と考え、お坊さんの前に行き、事情を説明した。するとお坊さんは1匹のドジョウをすくい上げ、念仏を唱えた。すると、ドジョウから人間の耳が生えてきた。
ドジョウたちは、その耳を頼りに人間の声を聞き、捕獲されないように沼の中を逃げ回った。そのおかげで、しばらくするとドジョウの数も増え、もとの賑わいを取り戻しつつあった。この間、天沼ではドジョウが全く採れなくなっていた。
これで大丈夫、と油断していたら、忍び足で近寄ってきた人間に根こそぎ捕獲されてしまった。油断したことを後悔したドジョウは、意を決して人間に話しかけた。人間は、耳の生えたドジョウが命乞いをする様子を見て驚き、ドジョウをその場に投げ捨てて逃げ帰った。ドジョウは一目散に天沼に戻り、今後は油断しないと誓う。
(投稿者: tom 投稿日時 2011-11-6 13:06 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 蛯原由紀夫「福島県の民話」(偕成社刊)より |
出典詳細 | 福島県の民話(ふるさとの民話10),日本児童文学者協会,偕成社,1978年12月,原題「天沼の耳ドジョウ」,採録地「南会津郡」,再話「蛯原由起夫」 |
場所について | 伊南村中学校の南側に天沼があった(地図は適当) |
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