昔、佐渡の黒姫という所に、勘右衛門という長者がいました。
ある年の節分の夜に、「福は内、鬼は外」と大声を張り上げて家のあちこちで豆をまいておりました。すると、いきなり台所から「助けてぇ~」と叫びながら、赤鬼が飛び出してきました。
最初は勘右衛門も驚き慌てましたが、赤鬼を奥の座敷に招いてご馳走をしてもてなしました。赤鬼は、すっかりご機嫌で帰っていきました。
やがて、田植えの季節になり、勘右衛門の家でも朝暗いうちから仕事に取りかかりました。ところが、急にはげしい雨が降り出し、仕方なく苗を田んぼに置いたままその日は家に帰りました。
すると翌日、勘右衛門の田んぼはすっかり田植えが終わっていました。こんな不思議な事が何年も何年も続くようになりました。
ある年の田植え時期、何世代も後の勘右衛門は「一体誰が田植えをしているのか」確かめようと、木の陰に隠れて様子をうかがっていました。すると、真っ暗な田んぼの中に、一人の早乙女が入っていきました。
そのうちに、早乙女はいい声で田植え歌を歌いながら、あっという間に苗を植えていきました。勘右衛門は、早乙女の良い歌声につられて、ついつい一緒に田んぼに入って踊り出してしまいました。
勘右衛門に見られていたことに気が付いた早乙女は、高く舞い上がり赤鬼の姿に変わり、風のようにお宮の裏山へ消えていきました。
それで、黒姫のお宮の裏山あたりを「鬼山」と呼ぶようになりました。この時から、勘右衛門の家では、節分の時に「福は内、鬼も内」と言うようになりました。
(紅子 2013-11-4 1:58)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 佐渡の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 佐渡の伝説(日本の伝説09),吉沢和夫,角川書店,1976年8年10日,原題「田植え鬼」 |
備考 | 狢工房様サイトによれば演出は白梅進 |
場所について | 鬼山(黒姫の宮の裏山) |
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