昔、岡山の吉備高原というところに五平という牛飼いの男がいました。
五平は、言う事を聞かない牛には、それはもう何度も何度も打ちつける、とても意地悪で心根の冷たい男でした。女房が「あまり牛をいじめないように」と忠告するのですが、全く聞く耳を持ちませんでした。
この年はとりわけ暑い夏でした。のどが乾いた牛が、勝手に水飲み場へ行ってしまわないように、炎天下の中に木につないでいました。それでも、五平が気が付かないうちに、一頭の牛が綱を引きちぎり、水飲み場へ行ってしまいました。
怒った五平は、牛をしたたかに叩きつけ、水をやらずに牛舎につなぎました。しかし、のどが乾ききった牛は、五平を突き倒してこぼれた水をゴクゴク飲みました。
怒り狂った五平は、水も飲ませないまま、炎天下の中、牛を連れ出し出かけていきました。すっかり弱っていた牛は、途中でとうとう力尽きて動かなくなり、そのまま死んでしまいました。
すると、五平はのどが渇いて渇いて耐えられなくなりました。家に帰って手桶の水を飲みほしましたがまだ足りず、大きな水瓶の水を飲みほしましたがまだ足りませんでした。五平は「もっと水をくれ」と言いながら、そのまま息絶えました。
死んだ五平は、ヒバリに生まれ変わりました。五平のヒバリは、夏になるとやけに喉が渇きました。空から清水を探しては、まっしぐらに降りてみますが、降りてみると清水は消えてしまいます。
いつまでたっても清水の水にありつけず、五平のヒバリは、今も水を求めて飛び続けているそうです。
(紅子 2013-9-13 18:51)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 稲田浩二(未来社刊)より |
出典詳細 | 岡山の民話(日本の民話36),稲田浩二,未来社,1964年03月15日,原題「雲雀むかし」,採録地「久米町中北上」,話者「立石長」,採集「立石憲利」 |
場所について | 吉備高原(地図は適当) |
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