昔、あるところにお寺があり、和尚さんと珍念(ちんねん)という小僧さんがいました。この珍念はとてもいたずら好きで、いつも和尚さんからお灸を据えられていました。
ある日の事、とうとう和尚さんも怒って、特別大きなお灸を据えることにしました。珍念をお堂の柱に縛りつけ、頭にお灸を乗せたまま、その晩はお堂の番をさせました。
夜も更けた頃、本堂の金の仏像を盗みに泥棒が入ってきました。珍念は縄を振りほどき、急いで泥棒を追いかけましたが、お堂の外へ出た時にはその姿はありませんでした。
珍念さんは、自分が番をしていながらご本尊さまを盗まれてしまったので、とても困ってしまいました。ふと地面をみると、泥棒の足跡がくっきり残っている事に気が付きました。
そこで珍念は、泥棒の足跡に特大のお灸を据えました。お灸が燃え始めると、不思議なことに泥棒の足の裏がアツアツに燃え始めました。泥棒はなんとか我慢しながら走っていましたが、どうにもこうにも我慢が出来なくなり、とうとうお寺に仏像を返しに戻ってきました。
お灸の効き目なのか、ご本尊様のパワーなのか、それはわかりませんが、泥棒の足に火が付いたことは確かなようです。その後も、珍念はいたずらをしては、和尚さんからお灸を据えられたそうです。
(紅子 2013-9-23 1:26)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
出典詳細 | 日本のふしぎ話(川崎大治 民話選3),川崎大治,童心社,1971年3月20日,原題「もぐさのききめ」 |
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