昔、ある山にきこりの爺様が住んでおった。この爺様、若い頃は一日に100本もの大木を切り倒した力自慢の爺様だったが、今はすっかり年をとって一日に2本切り倒すのがやっとになっておった。
一方そのころ、この山に一匹の大蛇が通りかかった。この大蛇、千年も生きている力の強い大蛇だったが、今はすっかり年をとって三ヶ月もなにも食べていなかった。大蛇は、爺様を見つけると「やっと飯にありつける」と策を練ることにした。
そして、夕暮れになって爺様が山の中腹に差し掛かったとき、助けを呼ぶ声がした。爺様が声のする方向をみると、大蛇が大木に首を挟まれている。さすがに驚いた爺様だったが、このままでは大蛇は死んでしまうと思い、怖いながらも助けてやることにした。ところが、なんとか大木をのけてやると大蛇はニタリと笑って爺様に襲いかかってくる。大木の下には穴があり、大蛇は木に首を挟まれたふりをしていただけだったのだ。
大木をどけるためにヘトヘトになっていた爺様はなんとか応戦するものの、食われてしまいそうになった。すると、いつも仲良くしている動物たちが「あんな嘘をついて助けにきた爺様を食らうなんて、なんて卑怯者だ」と大蛇に栗を投げつけた。小さな動物たちに罵られた大蛇は、つい勢いで「穴を掘っていなくてもあんな大木くらいどけられる。なんならやってみせてやる」と言ってしまった。
そ うして、大木は今度は穴を掘らずに大蛇の上に乗せられることになった。「ふもとに爺様たちが着くまでに、木をどけて追いついて、みんな喰ってやる」と息巻 いていた大蛇だったが、どう頑張っても抜けられなかった。悲しくなった大蛇が大声で泣いていると、「この馬鹿者が」と爺様が戻ってきて、大木を必死になっ てどけてやった。
へとへとになった大蛇と爺様は「昔だったらこんな大木くらい、なんてことはなかったのにな」とお互いに「年をとったものだ」と顔を見合わせて笑った。
大蛇は、これからは無理をせず山の奥深くにいって木の実や木の根を食べて生きると爺様に言い残して山の奥へと去っていった。爺様は、それからも毎日山に入り、2本切れたのも1本に減ってしまったがそれでも元気に暮らし、時々奥山を見つめては、あの時別れた大蛇を思ったという。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2013-1-18 21:12)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 京都府 |
DVD情報 | DVD-BOX第4集(DVD第19巻) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第077巻(発刊日:1987年5月) |
講談社の300より | 書籍によると「京都府のお話」 |
このお話の評価 | 9.43 (投票数 7) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧