昔、美人な娘が、ある侍のところへ嫁にいきました。
この嫁はとにかく不精者で、お茶碗も洗濯物もいつまでもほったらかしたり、洗濯物も干しっぱなしでした。でも、気立ても優しく両親にもニコニコと接してくれるので、姑は驚きながらも仲良く過ごしていました。
ある時、夫がいくさに出かけ、一人で寝ていた嫁の枕元に何やら変な歌声が聞こえてくるようになりました。「ちんちん こばかま 夜もふけてそうろう おしずまれ 姫ぎみどの や とんとん」こんな歌を繰り返し歌いながら、小指ほどもない小さな男たちが、何十何百と集まって、嫁の布団の周りを踊り始めました。
毎晩続く小さな化け物たちが怖くて怖くて、とうとう嫁は病気になって寝込んでしまいました。そうこうしているうちに戦から夫が帰ってきて、小さな化け物の話を聞きました。そこで夫は、寝間の押し入れの中に隠れて、真夜中の化け物の登場を待ちました。
夜が更けた頃、どこからともなく歌声が聞こえて、嫁の枕元に小さな男たちが現れました。夫が刀を抜き、小さな化け物に切りかかると、ふわっと小さな化け物たちは姿を消し、畳の上には古い爪楊枝が散らばっていました。「これが化け物の正体だよ、使った楊枝をきちんと始末しないから化けて出たんだよ」
そう夫から言われた嫁は、畳の上に散らばった古楊枝をつまんで、瞬きもせずじぃっと見つめていました。
(紅子 2012-5-4 0:31)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
出典詳細 | 日本のふしぎ話(川崎大治 民話選3),川崎大治,童心社,1971年3月20日,原題「ちんちんこばかま」 |
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